さらにもうひとつ重要なのは、そもそも特約が必要かどうかを考えることだ。

死亡保険の4割に付加されているという「三大疾病特約」について考えてみよう。ガン、急性心筋梗塞、脳卒中を対象にした特約だが、いずれかの病気にならない限り疾病の保障は受けられず、ほかの病気になった際には役立たない。また心筋梗塞では、医師が初診から60日以上、労働の制限を必要とすると診断した場合、脳卒中では言語障害など、多角的な神経学的後遺症が継続したという診断を受けたことなどが要件となっている。かなり厳しい要件で、多くの個別相談を受けてきた私の経験でも、脳卒中で要件を満たした方は1人しか存じ上げない。

病気が原因で障害者になった場合に保険金が支払われる「疾病障害特約」も要件が厳しい。公的年金制度にも障害年金の給付があるが、障害年金が給付対象とするものでも特約では対象にならない例がある。本来、公的保障が受けられない場合にこそ保険が必要なのに逆なのだ。

複雑な特約に加入する必要が本当にあるのか。残念ながら営業職員にさまざまな特約を勧められ、「どこかで役に立つのではないか」と軽い気持ちで付加してはいないだろうか。1つひとつの特約は月額数百円程度の負担ですむものが多く、それなら付けておいたほうが安心と安易に判断してしまうケースが目立つ。だが、1つひとつは安価でも、あれこれ加入するうちに保険料の3分の1程度を占めてしまう例も多く、何年にもわたって払い続ければ、それなりの額になる。それが肝心なときに使えないのでは、まったく意味がない。不要なもの、使えないものに特約料を支払うことになる。

そもそも保険は、不測の事態に備えるため、預貯金や公的な制度で賄えない部分をカバーするもの。私が相談を受けた中には、特約に入っていたことは覚えていても、手続きが面倒なので請求しなかったという例も少なくない。これは保険がなくても経済的には困らなかったという証し。このことからも保険はシンプルなもので十分といえる。

特約見直しの動きは、保険のシンプル化に一歩近づいたという点で評価できる。ではどんな特約なら付加する価値があるのか、次回はその見極め方について考えてみたい。

(高橋晴美=構成)