サブプライムローン問題に端を発した世界金融危機。欧米では大手金融機関への公的資金注入や協調利下げなど、混乱収束に向けた施策が行われている。各国の迅速な対応で、リーマン・ブラザーズ級の大手金融機関の破綻は、ひとまず回避されたとみていいだろう。

米証券大手のゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは、レバレッジ(てこの原理)をきかせて資金の何倍もの投資を行ってきた。しかし銀行に業態転換したことで、今後は自己資本比率8%以上を保つというBIS規制が課せられる。このルールを守るには増資を行うか、貸し剥がしなどを行うしかない。現在はその両方が行われ、資金引き揚げに対応するため、ヘッジファンドでは保有している株式や原油、穀物といった商品の投げ売りが行われている。これが世界中の株式市場を混乱に陥れたのである。

世界第2位の市場規模を誇る日本の株式市場は、市場規模が大きい分、流動性が高く売買がしやすい。そんな要素も手伝って、日本株の株価はとくに大きく乱高下する様相をみせている。

世界では実体経済への影響を注視しているが、最大の焦点は「欧米がデフレに突入してしまうかどうか」だろう。デフレという最悪のシナリオになれば、混乱は長期化する。すでにデフレ回避のために各国が協調利下げに踏み切っているものの、現状では景気後退を示すデータが次々と発表されている。

マーケットが堅調な時期には、投資資産の含み益が高額商品の購買力につながるが、含み損が生じると高額商品が売れなくなる。これが逆資産効果である。

一般的にはクルマや電気製品の買い替えなど、生活必需品とは異なる消費が景気のエンジンとなるが、現在はそのエンジンが故障している状態。不景気を感じさせるニュースが増えれば不安感が増し、必需品の購入すら手控えムードへと、状況は一層悪化する。つまり投資している人には直球で、投資していない人には緩いカーブで、誰もが少なからず影響を受けることになる。