資産運用を考える際、新興国は投資対象として外せない存在となった。
だが日本から直接、株式を売買できる新興国は限られている。国によっては現地の証券会社に口座を開くことも可能だが、かなりの手間であり、投資信託かETFを利用するのが適当だろう。
ETFとは、特定の株価指数などに値動きが連動する投資信託の一種で、一般の投資信託とは異なり、株式市場に上場している。新興国の株価指数に連動するものもあり、ブラジル株や中国株などに投資する銘柄が東京証券取引所などに上場しているが、その数は限られているので、主流はアメリカの株式市場に上場している海外ETFとなる。海外ETFは、楽天証券、SBI証券、マネックス証券など、一部の証券会社が扱っている。
ただし、ここで考えたいのが、指数に連動するETF投資でいいのかという点。
ポートフォリオ理論には、株式市場では業績や将来性などの情報により適切な株価が形成されるという「効率的市場仮説」がある。この仮説は、情報は適切に誰でも得られる形で公開されているので、ファンドマネジャーが市場に先んじて有利な銘柄を見つけ出すことは困難で、結局は市場平均に連動、つまり市場に身を任せる投資が効率的という考え方だ。
しかし、これは企業の情報開示が進み、市場が成熟した先進国にのみ通用する論理であって、新興国ではその限りではないというのが私の持論である。
たとえば、中国には国民だけが売買できる「A株」と、外国人も売買できる「B株」がある。両市場に重複して上場している銘柄の中には、同一銘柄でもA株とB株で7倍近くも株価に開きがあるものもあった。成熟した市場であれば、どちらかの株価が適正であり、そちらに収れんされる。しかし、それが放置され、7倍もの価格差にまで広がっていくのだ。これでは企業価値を適正に反映した株価形成が行われているとはいえない。