電子マネー市場が急拡大している。今年度の電子マネー取扱金額は1兆4000億円に迫る勢い。2年前の約1750億円に比べ、約8倍に。また新聞報道によると、主要九規格の延べ会員数は今年6月末に1億人を突破した。

なかでも勢いを増しているのが、JR東日本のSuica。Suicaと相互利用が可能なPASMO(首都圏私鉄・バスの共通IC乗車券)との月間合計決済件数は、今年6月で約2859万件。セブン&アイ・ホールディングスのnanacoを抜き、初めて首位に立った。7月の決済件数も3000万件を突破し、順調に市場を拡大している。

Suicaの強みは鉄道系ならではの使い勝手のよさ。非接触ICカードによる「かざすだけで決済OK」という特徴が、本業のビジネスモデルにフィット、切符を買わずに改札をスルーできる利便性は、他の電子マネーのそれを上回る。また鉄道だけでなく、“駅ソト”で使える提携店舗も増加し、ヤフーやビックカメラなどとの提携カードが続々誕生。携帯で電車に乗れるモバイルSuicaも登場し、東北・東海道新幹線でも利用、割引が適用されるサービスを展開している(JR東海の「エクスプレス・カード」会員になることが条件)。

JR東海以外のJR各社との提携も進行し、2010年をめどに全国のJRでSuicaとの相互利用が可能となる予定だ。Suicaを本業の軸に据えたビジネス展開が明確な形で進み、「本業になくてはならない存在」から、「Suica自体が本業に進化した」

一方、nanacoやイオンのWAONなどの流通系電子マネーは、動きが鈍い印象。昨年4月にスタートしたnanacoについては、イトーヨーカドーでの利用スタートが難航したのが象徴的で、すったもんだの末、ようやく今年5月に全店での利用が開始された。

結局、流通系電子マネーは、ポイントカードの役割を超えるものではないというのが私の印象。一定の顧客を囲い込むことには成功したものの、その後の本業を絡めた市場拡大は難しいのではないか。