BRICsやVISTAなど、高成長が期待される新興国だが、雲行きがあやしくなっている。北京オリンピックに沸いた中国の株価は、年初から6割下落という驚異的な下げを記録。インドの下落率も3割に達した。資源という強みを持ち、最後の砦とみられていたロシアも2割超、ブラジルも1割超と、いずれも大きな下げに転じている。
理由はいくつかあるが、そのひとつに投資マネーの「質への逃避」が挙げられる。サブプライムローン問題の広がりによって信用不安が増し、投資家の間でより安全性の高い資産へと資金をシフトさせる動きが出たことだ。
タイ、南アフリカ、ベトナムなどではその影響が顕著に表れ、昨年秋以降から株価は大きく値を下げている。南アフリカの懸念材料は、ジンバブエからの難民流入や20%を超える失業率。またロシアでも、グルジア情勢の悪化が懸念され、株価に翳を落としている。
発展途上の新興国には、重大な政策変更や資産凍結を含む規制の導入、クーデターや重大な政治体制の変更、紛争などの非常事態によって、マーケットが混乱する「カントリー・リスク」が常に潜む。好景気のときには忘れられがちなリスクだが、ひとたび景気が悪化すれば、暴動も起きやすくなるなど、株式市場にも大きな影響が及ぶ。
米国から欧州へと景気後退が広がる中、リスクの高い新興国から安全性の高い先進国などの債券に資金が逃避するのは当然の流れ。新興国では経済規模が小さいこともあり、資金の流出入による影響が大きく、変動幅も大きい。