アフガニスタンで権力を掌握した武装勢力タリバンとは、いったいどんな組織なのか。テロ研究者の和田大樹さんは、「タリバンはテロや恐怖政治を行うだけの団体のようにみえるが、支配地域では医療支援や食糧の提供なども行っている。こうした活動の積み重ねによって、地元住民からも一定の支持を獲得しているようだ」と指摘する――。
「20年前とは違う」とタリバン指導部は言うが…
8月15日、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを掌握し、8月30日には米軍の完全撤退が完了した。バイデン大統領はその翌日にホワイトハウスで演説し、それを偉大な成功だと位置づけた。
9月21日にはタリバンによる暫定政権が発足。欧米諸国を中心に国際社会は、20年前の「第1次」タリバン政権のように、厳格なイスラム法(シャリーア)による政教一致的な支配が復活すると懸念を強めている。
カブールの制圧直後、タリバンの報道官は、「アフガニスタンの独立と自由のために最善を尽くす」「イスラム法の範囲内で女性の権利は尊重される、20年前とは違う」などと発言した。一方で国営放送の女性アナウンサーが出社をタリバンから拒否され、人気コメディアンや音楽家がタリバン兵に殺害されるなど、指導部の発言と末端の兵士の行動が一致していない状況も報じられている。
タリバンとはそもそもどういう組織なのか
タリバンとはそもそも何なのか。簡単に説明すると、タリバンとは現地の公用語であるパシュトゥン語で学生を意味し、1994年に南部カンダハル州でイスラム教指導者だったムハンマド・オマル氏が設立した組織だ。
パキスタンのイスラム神学校で学んだパシュトゥン人(アフガニスタンの南部と東部、パキスタンの北部と西部に多い)の若者たちが多く参加し、アフガニスタン南部を主な拠点としている。西側諸国の安全保障関係者は、パキスタンの情報機関である3軍統合情報部(ISI)が、タリバンの創設当初から現在まで、軍事的・経済的支援を行ってきたとみている。