「アフガン崩壊」が引き起こす4つの問題点
アフガニスタンにおける混乱はいまだに進行中である。しかし筆者には、20年にわたるアメリカ主導による民主的アフガニスタン建国の失敗とこれについての8月31日のバイデン大統領演説は、「アフガン崩壊」というパンドラの箱を開けてしまったように見える。そして、開いた箱から飛び出したさまざまな問題に現下の世界は回答をもっていないように見える。少なくとも筆者にはその解は見つかっていない。
本稿では、さまざまな問題の中から、①アメリカがアメリカ型の国家建設のための派兵はもうやらないことを鮮明にしたことが持つ意味、②対中国問題、③国際テロ問題、④カブール陥落で開かれた日本外交に対する問題提起という4つについて検討してゆきたい。なお、本稿を執筆した9月5日以降も事態は刻一刻と変化していることを明記しておきたい。
まず、①アメリカがアメリカ型のアフガニスタン建設に失敗し、このような国家建設のための「boots on the ground(派兵)はもうやらない」ことを鮮明にしたことが持つ意味について見ていこう。
バイデン氏の演説で飛び出した「驚くべき発言」
8月31日バイデン大統領は「アメリカには、撤退するか残るかの選択肢しかなかった」「タリバンが権力を握ってからの17日間の撤退作戦で98%のアメリカ人を撤退させた」「空港における混乱の回避はできなかった」等、バイデン政権の立場を完全正当化する演説を行った。
そういう政権正当化の側面はあるにせよ、この演説にはそれだけでは終わらない強烈なメッセージが入っている。それは「アメリカは今後自国の雛型に沿った国家を外国につくることはしない」という宣言である。いわば世界の警察官としてのアメリカの役割は終わったという宣言のように聞こえるのである。
これは驚くべき発言だと思う。アメリカの歴史は、アメリカ理想主義の下で世界を作り変えるという理念主義と、米国は自国の建設以外に世界全体のことには関わらないという孤立主義の歴史が交錯している。すでにトランプ前大統領が言い出した「共和党型アメリカファースト」に対して今度は、ほかならぬバイデン大統領によって「民主党型自国ファースト」宣言がなされたのではないか。
少なくともこれからしばらくの間、孤立主義に向かうアメリカに対して、世界各国、なかんずく日本はどう対応すべきか。筆者には直の答えが出ないのである。