現地職員のためにもカブールに戻るべきだ
さらに第3の疑問がある。
アフガニスタンの現地職員に対する善意を最後の段階で示そうとしたとはいえ、結果において、日本のために20年間働いた現地職員を日本は1人も移送できなかった。外交も政治も結果がすべてである。この厳しい現実を前に、なすべきことはないのか。
例えば、圧倒的多数の国連決議の数に頼るだけではなく、また、カタールという安全地帯から交渉をするだけではなく、カブールでまずは日本人職員による館務を再開するという案はないだろうか。
アメリカの友人にこの話をすると、彼も賛意を示した。そして、興味深い示唆も与えてくれた。「ただ、腰を落ち着けてやるなら、コーランを読み込んだ職員を配置した方がよいのでは」。現場で現地人職員を保護し、退避希望者移送への指揮を執るためには、イスラム教への理解が不可欠だからだろう。
米国・NATOに比べ、軍事力を使うことなく、アフガンの平和建設のために金銭的・人的貢献をしてきた日本にして初めてできる交渉アプローチとはならないだろうか。カブールで開かれた外国公館が中国・ロシア・日本となった時に、そこに20年の歳月をかけたアフガニスタンに対する新政策が生まれる余地はないだろうか。
パンドラの箱から飛び出した、回答のない、しかし重大な疑問のように思うのである。