緊張から解放されれば姿勢は勝手によくなる
「もう辛くて、オルガンを弾くのはやめようと思っているんです」
ある日、私にそう訴えかけた女性がいました。硬直した腕の痛みに耐えかねて訪ねて来られたのです。
彼女は毎週私のところに通われ、半年後、フランスのルルドで、世界遺産の教会にあるオルガンを演奏する夢を叶えました。それを報告してくださったとき、彼女の姿勢は凛としたユリのように美しく、輝いて見えました。体の形の話ではなく、その人そのものの印象としてです。きっと今も専属の教会で弾き続けていると思います。
僕は医療の手から溢れた人々を見続けてきました。さまざまな理由で僕のところへ流れ着き、思いの丈を吐露します。救われる当てのなかったことを、医療にも、そして僕にも期待していないことを。僕はそんな人々の体に手を乗せ、体は何を訴えているのか、耳を澄ませます。
体は体で言いたいことがあり、それはいつも筋緊張として現れています。その望みを聴き、僕ができることを手伝います。怖くて目を開けられない子どもに、「大丈夫だから、目を開けてごらんよ、一緒にいるから」というような具合に。
自由にしていいことがわかると、体は天に向かって伸びて、花開いていきます。それを見て他人は「姿勢がよくなった」と言うのです。
本当は、姿勢にこだわる必要なんてないと思っています。緊張から解放されれば、体は勝手に望む方向へ行くので、姿勢はよくなっていく。条件さえそろえば、人は勝手に美しくなっていく。
カギは、「こうしなきゃ」「これじゃダメだ」という、頭の支配から体を解き放つこと。そのためのヒントを満載したつもりです。魔法のフレーズが、あなたのこれからの人生の一助になれば幸いです。