医薬品では解決できない感染症を抑える4つの方法

公衆衛生の専門用語でいえば、ロックダウンは「非製薬的介入(NPI)」の一部に含まれる。

感染症対策の中でも、治療薬やワクチン、つまり医薬品を使って新型コロナを抑え込もうとするのが「製薬的介入」だ。

有効な医薬品があるなら、新型コロナは医療従事者に任せることができて、一般市民が特別に心配しなくてもよいのだが、現在のところ、そうはなっていない。

そこで必要となるのが、治療薬やワクチン以外の感染症予防であり、まとめて非製薬的介入と呼ばれる。

非製薬的介入には、①個人の対策、②環境対策、③ソーシャルディスタンスの対策、④移動の制限対策の4つが含まれる。

まず、個人の対策は、個人が個人の責任で実行できる清潔習慣のことを指しており、マスクや手洗いや手指消毒などのことだ。

次の環境対策というのは、公共の場所やテーブルなどをこまめに消毒したり、人が多く集まる場所での換気をよくしたりするなど、感染症対策として個々人ではなく生活環境を清潔に保つということだ。

三つ目のソーシャルディスタンスの対策とは、感染者(感染の疑いのある者)と非感染者の間で距離(ディスタンス)を作って感染症の拡大を予防することだ。日本でいう「三密」回避はもちろん、隔離や検疫、休校、リモートワーク、保健所が行う接触者追跡の聞き取りも、集会禁止や外出禁止なども含まれる。

四つ目の移動の制限は、個々人に対する制限というよりは、感染症の蔓延している地域を対象として旅行の制限や国境閉鎖などをすることだ。

ロックダウンは想定外の選択肢だったが…

この分類から見れば、いわゆるロックダウンは、ソーシャルディスタンス対策の中でも大規模で厳しいもの、およびロックダウンされた都市や地域との移動制限ということになる。

パンデミック中のタイムズスクエア
写真=iStock.com/Leo Cunha Media
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少なくとも先進諸国では、新型コロナまでは、感染症は治療薬やワクチンによって解決済みか、近々解決可能と考えられていた。

つまり、緊急避難の一時的な場つなぎに過ぎなかった非製薬的介入が大規模化・長期化することは想定外だったことになる。

また、新型コロナに対する製薬的介入の切り札であるワクチンの効果は、短期的で何度も接種しなければならず、しかも接種後も感染することがあると分かり始めている。

こうして、非製薬的介入を重視せざるを得ない手詰まりという事情が、ロックダウンの論じられる背景にある。