2020年の世界幸福度ランキングで、スイスは3位で日本は62位だった。『Think Clearly』(サンマーク出版)著者でスイス在住の作家、ロルフ・ドベリ氏は「日本人はマスクを着用する必要がない状況でも、周りからの目を気にして誰もがつけている。これが日本人の幸福度が低い原因ではないか」という――。

※本稿は、大野和基インタビュー・編『自由の奪還 全体主義、非科学の暴走を止められるか』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

マスクを着用して自家用車を運転する日本人女性
写真=iStock.com/Rossella De Berti
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やみくもに努力するより自分の得意分野を伸ばせ

——日本には「災い転じて福となす」ということわざがあり、「コロナ禍を社会変革のきっかけにしよう」という議論も生まれています。しかし、あなたは『Think Smart』(サンマーク出版)のなかで「危機から無理にプラスの要素を見出さなくてもよい」と述べていますね。

ただやみくもに頑張るべきではありません。ウォーレン・バフェットの例を挙げるならば、我々は「circle of competence(能力の輪:自分がよく理解できている得意な分野)」をもつべきです。能力が世界レベルであれば理想的ですが、そこまでいかなくても、自分の「能力の輪」の内側であればあなたの能力は平均より秀でているわけですから、成功する可能性は格段に高まります。いろいろな分野に手を出すのではなく、輪の規模が小さかろうが大きかろうが、とにかく一つの輪の中に留まるべきです。パンデミックではない常時でも、まったく同じことです。

よく「内なる声に耳を傾けよ」と言われますが、それだけでは駄目です。自分から出てくる声は、往々にして希望的観測を孕んでいるからです。まずあなたの過去10年、20年の実績を見て、平均より優れている分野を探すべきです。それはあなたが楽しんできた分野である可能性が高いでしょう。でなければ、平均より秀でることなどできませんから。

得意分野を見つけたら、能力の向上に集中しなければなりません。パンデミックの真っ只中にある現在でも、できることはいくらでもあります。「能力の輪」を深めに深め、自分の専門性を高めましょう。

——同書ではさらに、「自分の失敗を受け入れて現実を視るべき」と説いています。しかし、自分の失敗を素直に認めるのは非常に難しいことです。私たちはどのようなステップを踏むべきでしょうか。

それはすばらしい質問です。まず言えるのは、我々が学ぶのは成功からではなく、失敗からであること。成功は一見、自分の努力によって得ることができたものと勘違いしがちですが、実際にはたんなる偶然である場合が多い。よって成功から学べることは何もない。でも失敗したときは、どこでどう間違ったのかを具体的に指摘できます。これは他人の経験においてもそうで、誰かの成功物語よりも失敗からのほうがはるかに密度の高い情報を得られます。

我々はまず、失敗はすべての人が人生で経験するもので、それは人生の一部であって何も恥じるべきではないことを認識するべきです。そう捉えるだけでも、気持ちが楽になります。次に自分のこれまでの失敗を書き出し、失敗が起きた原因を細かく分析します。そうすれば、同じ間違いを犯すことはなくなるでしょう。また失敗を一定期間書き留めていると、自分の弱点のパターンがわかってきます。すると弱点をカバーするために長所を磨いたり、他の人の力を借りたりして、失敗を減らすことができると同時に、「自分は自身が思うほど偉大な存在ではない」と謙虚になることができるのです。