文化大革命の再来となるのか
貧富の格差は深刻化し、共産党政権への不満は増えるだろう。特に、今日ではSNSの普及によって社会全体の監視を徹底することは難しい。習政権がIT先端企業への締め付けを強化している理由の一つは、SNS上での共産党批判を取り締まるためだ。9月に入り、習政権が進める“共同富裕(国全体で裕福になる考え)”に懸念を示した北京大学の張維迎教授の論文はネット上から削除され、SNS上でも送信できなくなったと報じられた。
そのほかにも、“習近平思想”の履修義務化、韓国BTSなど海外のポップスターを応援するファンクラブのSNSアカウントの停止、脱税容疑による有名俳優の摘発など、社会統制の一段の強化を示す例が増えている。その目的は、習氏の考えを社会に浸透させること、同氏以外の人物が人気を得ることの阻止、共産党への恭順の意を示させることだ。習氏が政権維持の方策として社会統制を強化することによって、中国が再び文化大革命のような時代を迎えるとの懸念が増えている。
“チャイナリスク”が高まるこれだけの理由
今後、“チャイナリスク”は高まるだろう。つまり、習氏が自らの支配基盤を強化して共産党の一党独裁体制を守ろうとする結果、中国経済の成長を支えてきたアリババやテンセントなど民間のアニマルスピリットは減退し、潜在成長率が低下する展開が予想される。
2018年に習氏は憲法を改正し、2期10年までと定められていた国家主席の任期制限を撤廃した。2022年の党大会を経て習政権は3期目に入る可能性が高い。突き詰めていえば、習氏は生涯にわたって中国の最高意思決定権者としての地位を確立し、共産党による支配体制を守ろうと考えているだろう。思想教育に加え、IT先端企業や民間企業の創業経営者、リベラル派、少数民族、共産党政権への批判を行う個人などへの監視や締め付けは強化されるだろう。それは、文化大革命時の毛沢東の行動様式に似ている。