グローバル経営人材300人を選ぶ53の評価項目

実際に経営人材に登用するには選抜、育成プログラムだけではなく、グローバル共通のアセスメントを通過する必要がある。その内容は「グループウェイ」「リーダーシップ」「グローバルマインド」の3つのカテゴリーに分かれ、合計53の評価項目がある。

「業務に関するパフォーマンスは所属するグループの各法人で評価するが、それ以外にグローバル人材として活躍できるのかをチェックする。3つのコンピテンシーごとの力量、考え方を評価する。また、評価の仕方は上司、同僚、部下による360度評価を行っている」(西井人事部長)

このプロセスを経てグローバル経営人材の約300人が選出されることになる。同社はグローバル人材を「コア人材」と「高機能人材」の2つに分け、コア人材をグローバルな視点で何が事業にとって大切かを見きわめ、様々な能力を持つ人材を使いこなす役割を果たすマネジメント人材、高機能人材を研究・開発、技術など専門性の高いプロフェッショナルと定義する。

この要件に合致し、選抜・育成・登用の対象となる社員は300人。海外を含めた味の素グループの社員約2万9000人全員がその資格を持つ。最も近い位置にいるのは同社の基幹人材(課長級以上)の1400人。海外法人の基幹人材も含めると2200人存在する。もちろん全員が第一関門である選抜の対象になるわけではない。

西井人事部長は「選抜されるのは5%程度。1400人であれば70人ぐらいだ。5%を超えると選抜型とはいえないだろう」と指摘する。仮に海外を含めた2200人の5%は110人。グローバル経営人材に起用される日本人の割合はぐっと少なくなる。そうでなくとも、前述したように海外法人の役員の現地化比率を50%に引き上げる目標を掲げており、日本人の就くポストが減ることになる。

アセスメントをクリアした社員は現地法人の枢要なポストに登用される。また、グローバル社員の報酬は世界共通の賃金制度に基づいて決まる。ということはグローバル社員と国・地域ごとの制度の二層の賃金体系に分かれることになる。西井人事部長は「300人と人数からいえば限定的。彼らを処遇できる報酬体系であればよく、それ以外はローカルな制度でいいと考えている」と説明する。

現在、グローバル人材育成のプラットホームの基盤は整ったといえる。次のステップは、日本人、外国人を問わずグローバルな異動による適材適所の配置である。同社としては第一ステップとしてJG1層以上の国内外関係会社の人材交流を目指している。

もちろん、理想的には本社の部・課長クラスのJG2の人材交流が望ましいが、クリアしなければいけない課題もあるという。