コロナで発生している「非対面の恐怖」
テレワークを導入する企業は増えたものの、周囲にトラブルを相談することができずにメンタル不調に陥る社員が出てきた――そんな事例が聞こえてくるようになりました。こうしたメンタル不調に気づかずに放置していると、音信不通になるなど取り返しのつかないこともあります。
私が勤務するニットでは、33カ国に400名のメンバーがいますが、コミュニケーションはすべてオンラインです。通勤がないためオン・オフの切り替えが難しいといった仕事上の悩みや、雑談ができないことによるメンバー同士の人間関係の構築が難しいといった対人関係の悩みはコロナ禍以前から存在していたため、社内で問題解決に向き合ってきました。
そのため、テレワークで心身に支障をきたしやすい人の生活や働き方の傾向がわかってきました。そこで、非対面コミュニケーションから生じる心身の不調――「サイレントうつ」を回避する方法をお伝えしたいと思います。
会社にも、自分にも、サイレントに進行する
「サイレントうつ」は当社が企業への注意喚起のためにつくった造語で、医学的な病名ではありません。ただし、リモートワークによる社員のメンタル不調は、人事担当者の間で最近よく話題に上るテーマの一つです。
医師であり、産業医コンシェルジュを行うDr.健康経営の鈴木健太代表は「オフィスとは異なり、自宅など周囲に人が少ない状態でテレワークをしている人にサイレントうつは起こりがちです」と言います。
睡眠障害や慢性的な疲れといった身体的な問題が出ても気づきにくく、会社だけでなく自分自身でも「サイレント」で症状が悪化していくというわけです。また、外でリフレッシュできないことなども、サイレントうつを引き起こす要因の一つでしょう。
サイレントうつの予備軍について、鈴木代表は下記のような傾向があるといいます。
・真面目すぎる
・完璧主義
・パソコン作業が多い仕事
・一人暮らしで人との会話が少ない
・趣味などの息抜きがない
オフィス勤務なら誰かが気づいてくれた不調でも、テレワークだと気づくのが難しくなります。特にテレワークはテキストコミュニケーションがメインになるため、相手からの発信がなければ心身の状態が分かりにくいということが多くあります。