「勝ち馬に乗ることが優先された。その重いツケ」

後半で朝日社説はこうも指摘する。

「安倍氏の突然の辞任を受けた昨年の総裁選で、自民党は党員・党友投票の実施を見送り、主要派閥が雪崩をうって首相を担ぎ上げた。一国のリーダーとしての資質やビジョン、政策の吟味はそっちのけで、勝ち馬に乗ることが優先された。その重いツケが回ってきたともいえる」

まさしく党利党略である。9月27日に投開票される総裁選では、党利党略ではなく、国民のことを真に考える党首を選出してほしい。

朝日社説も続けて「今回の総裁選が、目前に迫る衆院選に向けて不人気な首相を代えるという、単なる看板の掛け替えであってはならない」と主張している。

菅首相の本質は党利党略を飛び越えた「個利個略」にある

毎日社説は「独善と楽観が招いた末路」との見出しを付けたうえで、冒頭部分から「秋の衆院選が迫る中、内閣支持率の下落に歯止めが掛からず、政権運営が行き詰まった末の突然の退陣劇となった」と指摘する。

毎日社説が指摘するように、菅首相という政治家の問題は、周囲の貴重な意見を聞こうとしない「独善」と新型コロナに対する「楽観」にある。

毎日社説は「一時は、人事の刷新をテコに衆院を解散し、総裁選を先送りすることまで検討していた」とも指摘し、こう批判する。

「こうした『禁じ手』を繰り返してまでも自らの政治的延命を図ろうとする『個利個略』の姿勢は、党内の大きな反発を招いた」

「禁じ手」とは、唐突な役員人事と衆院解散だ。菅首相の本質は、党利党略を飛び越えた「個利個略」にある。だから自民党内でも批判の声が高まったのだ。

毎日社説は書く。

「先月の毎日新聞の世論調査では、五輪開催を評価する意見が多数を占める一方、内閣支持率は26%と過去最低を記録した」
「昨年9月の首相就任直後は、秋田の農家出身の『たたき上げ』というイメージが好感され、支持率は6割を超えた」

五輪開催の評価は意見が分かれるが、間違いないのはわずか1年での支持率の「6割」から「26%」への下落である。こうした支持率の低下に自民党の若い国会議員が敏感に反応し、前首相の安倍氏や財務相兼副総理の麻生氏も首相交代を検討したのである。