ネット時代は個人情報の全データ化を可能にした

米国では個人の完全データ化とその活用に向けて、状況がより早く進行しているようにみえます。これは9・11テロの直後に愛国者法が成立したことが大きく影響しています。国家が個人メールや電話などをチェックすることができるようになり、それが拡大しドイツのメルケル首相さえも電話を盗聴されていたことが判明して国際問題となりました。こうしたどさくさの中で、グーグルなどはプライバシーポリシーを変更して、利用者の個人情報を第三者に提供することを可能にしました。

藤原智美『スマホ断食』(潮新書)
藤原智美『スマホ断食』(潮新書)

ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ著『ビッグデータの正体』はこう述べています。

「アマゾンはショッピングの好み、グーグルはウェブサイト閲覧の癖を調べているし、ツイッターは我々の心の動きを手中に収めている。フェイスブックもこうした情報に加えて、交友関係まで押さえている」

ツイッターの「心の動き」とは、ツイートされる膨大なメッセージに心理学的な手法を加えて分析すること。フェイスブックの「交友関係」とは、ソーシャルグラフといわれる公開交友録のことで、こちらは世界の人口の10パーセントが網羅されています。今ではこれらの情報とSNSのメッセージなどから、第三者が個人を特定して住所を割りだしたりすることも不可能ではなくなりつつあります。

ネット時代はDNA情報から人間関係にいたる個人情報の全データ化を可能にしました。将来、人はことごとくデータ化され、常に誰かに「見られる」ことになるかもしれません。

一部の国では、大勢の群衆の中から特定の個人を監視カメラと顔認証システムによって選び出し、その個人情報をすべて呼び出すことが可能になっています。

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