小金持ちが気前よく金を使うようにさせる

蓄えのある先進国ではマクロの経済政策よりも消費者や経営者の「心理」が経済を大きく動かす。それが21世紀の経済の新しい原理として私が提起してきた「心理経済学」なのである。

1500兆円という日本の個人金融資産は、超低金利でも高利回りの運用に回らず、消費に使われて市場に流れ出すこともなく、ただひたすらに銀行預金や郵便貯金などで眠らされてきた。これは純粋に「心理経済学」の問題で、「失われた20年」の底流で日本人の不安心理が膨らみ続けてきたからだ。国民の消費マインドが凍てついているから、金利を下げても、定額給付金や子ども手当のようなバラマキをやっても、経済波及効果はほとんどないのだ。

政府は20世紀的な財投と金利を重視した経済政策と決別して、心理経済学に切り替えなければいけない。国民心理を温めることを第一に政策を考えるべきだし、当然、一国のリーダーが暗い顔をしていては話にならない。国民の財布の紐は固くなるばかりである。

心理経済学の観点から正しいリーダーシップを発揮した好例は、アメリカのクリントン元大統領だ。持ち前の明るいキャラクターで、インフレ退治を理由に金利を上げた。20世紀の経済学の教科書によれば、利上げは景気を抑制する方向で作用するはずだが、結果は逆。世界的な低金利時代にアメリカだけ金利を高くしたから、世界中から資金が流れ込んできて、アメリカ経済は空前の活況を呈することになった。一時的に財政黒字を記録したほどである。

日本やアメリカのように資産リッチな成熟国においては、中流以上の資産を持っている層の心理をリラックスさせることが非常に重要だ。まず資産を持っている小金持ちが、「人生をエンジョイしよう」「家を建て替えよう」「別荘を買おう」「車を買い替えよう」「旅行に出かけよう」という気持ちになって消費を先導しなければ、経済はプラスの方向に進まない。