「食べ物」に例えられてきたマイノリティーの肌の色

筆者の出身地であるドイツで人気のお菓子に「外側がチョコレートで包まれているマシュマロ」があります。昔からドイツの色んな会社のものが売られていますが、これが地域によっては2000年代まではNegerkuss(和訳:「黒ん坊キッス」)と呼ばれていました。

マシュマロキッス
マシュマロキッス(写真=Rainer Zenz/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

そういった影響もあってか、ドイツでは、「黒人の肌の色はチョコレートみたいでかわいい」という旨の発言を聞くことがあります。

昔から「肌の色を食べ物にたとえないでほしい」という黒人からの抗議の声はありました。しかしそういった黒人当事者の声は無視され、ドイツのマジョリティーである白人の「かわいいからいいじゃないか」という意見が幅を利かせていました。

現在はNegerkuss(和訳:「黒ん坊キッス」)の呼び方は変わり、Schokokuss(和訳:「チョコキッス」)、またはSchaumkuss(和訳:「マシュマロキッス」)と呼ばれるようになりました。

しかしドイツでは今でも「黒人の肌の色をチョコレートなどの食べ物にたとえる人」が後を絶ちません。長年お菓子メーカーがNegerkuss(和訳:「黒ん坊キッス」)という言葉を当たり前のように使ってきた弊害は今も出ているのです。

一方で日本人を含む東洋人の容姿についても、食べ物で例える表現が残っています。ドイツでは今でも「アーモンドのような目」と言う人がいます。しかし、たとえ褒めているのだとしても人の身体を食べ物にたとえることにはやはり違和感があります。

「アーモンドのような目」にしても「チョコレートのような肌」にしても、筆者が一番問題だと感じるのは、東洋人や黒人が違和感を伝えても、「かわいいと思って言っているだけだから、別にいいじゃない?」という白人側のマジョリティー側の感覚で、当事者のメッセージがかき消されてしまうことです。

しばしば問題になる「時代についていけていない人」

8月8日には野球解説者の張本勲氏が「サンデーモーニング」(TBS系、毎週日曜朝)で、東京五輪女子フェザー級で金メダルを獲得した入江聖奈選手について「女性でも殴り合い好きな人がいるんだね。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って。こんな競技好きな人がいるんだ」と発言し、物議を醸しました。

発言を受けて、日本ボクシング連盟の内田貞信会長はTBSに対して「女性およびボクシング競技を蔑視したと思わせる発言があった」と抗議し、張本氏は翌週15日の放送で謝罪しています。

昔は若い女性について「嫁入り前」「お嬢ちゃん」という言葉はわりと日常的に使われていました。女性は「おしとやか」であるべきとの社会通念もありました。そういった背景があることから、高齢の張本氏に対して「現在の価値観に沿った考え方をすべきだと求めるのは酷だ」という意見も見られます。