文化財の価値を後世に伝えるために
多くの国民は、国宝が最も価値ある文化財で、その次が重文だと思っている。また、史跡や名勝に指定されているエリアのほうが、それ以外のエリアよりも歴史的価値が高いと思っている。宮内庁は、既得権益を守る縦割り行政の弊害がこんなところに生じているとは思っていないだろう。
結果として、文化財の価値が誤解されれば、棄損される危険性も高くなってしまう。
だが、問題はそれだけではない。すでに記したように、文化財保護法の対象から外れていると、学術調査が行えず、国民の目に触れる機会が制限され、さらには整備が行き届かないことにもなる。
「提言」の別添資料には、個々の有識者の意見として、次のような文言も記されている。
「文化財指定をすることによって、天皇陵や修学院、桂離宮などにもその問題は波及するので、その前に宮内庁としてどうするか考える必要がある」
宮内庁管下の歴史遺産や文化遺産は、御物をふくめて、皇室用財産である前に国民共有の財産である。その価値は国民の前に、わかりやすく示されるべきだし、適切に保存および整備され、後世に伝えられなければならない。
宮内庁に尋ねると、「十分に管理してきたため文化財の適用をしてこなかった。今後については現時点で公表している以外は不明です」とのこと。
これを機に、皇室の権威をかさに着て、自らのテリトリーを必死に守ることの愚かさに気づいてもらいたい。
今回の国宝指定が、宮内庁が姿勢を改める第一歩になればいいのだが。