謝罪文の最初に出てくるのが「トヨタ自動車さま」
やはりというか、当然というか、とにかく河村市長は5日、謝罪文を読むに至った。「このたび、トヨタ自動車さまご所属の後藤希友選手はじめ関係者の皆さまが、東京2020オリンピック大会における優勝報告として小職をご訪問いただいた際、軽率にもご本人さまの長年の努力の結晶であります金メダルを汚す行為に及びました」。それが書き出し。以後は「立場をわきまえない極めて不適切な行為であったと猛省すべきと痛感しており、誠に申し訳なく心からおわびを申し上げます」。そういった内容だった。
最初に出てくるのが「トヨタ自動車さま」だ。市役所への抗議やアスリートからの反応もあったが、決定的だったのはトヨタ自動車が5日午前に出したコメントだったことがまるわかりだ。コメントの後半を引用する。「今回の不適切かつあるまじき行為は、アスリートへの敬意や賞賛、また感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思います。河村市長には、責任あるリーダーとしての行動を切に願います」
リーダーとしての行動全般にまでダメ出しをされたのだから、市長は謝罪するしかないだろう。トヨタ自動車の社員が名古屋市にどれだけ住んでいるかは知らないが、いくら河村市長でも「迷惑をかけたのであれば、ごめんなさい」ではすまないと思い知らされたはずだ。
市長に「問題ではなかったか」と聞いたのは、すべて女性記者
このことでわかったのは、セクハラ案件への有効な処方箋は「加害者よりえらい人、加害者の生殺与奪を握っている人が、毅然たる態度を取ること」だということだ。
正反対だったのが、財務省の事例。事務方トップのセクハラが告発された時、「セクハラ罪という罪はない」「(事務方トップの)人権はなしですか」とかばい続けた大臣が、今も大臣をしている。近年、霞ヶ関を目指す東大生が減っているとされているが、こういうことも影響していると思う。
もうひとつ、女性の目を増やすことの大切さもわかった。名古屋市役所で市長が謝罪文を読み上げている様子は、ユーチューブで見た。メーテレの「ノーカット」映像で、記者とのやりとりもすべてあった。
表敬訪問の際、市長は後藤選手に「でかいな、でかいな」と繰り返したり、「恋愛は禁止なのか」と聞いたりしたという。そのことを指摘し、「何を言っても許されるおごりとか緩みはなかったか」と聞いていたのは、女性の声だった。4日の夜のコメント「愛情表現のつもりだった」についての違和感を口にし、「傷に塩を塗られたと感じると思わなかったのか」と聞いていたのも、女性の声だった。
「あなたのしたことは、問題ではなかったか」と聞いているのが、すべて女性(同じ人かもしれない)だったのだ。