プーチンが狙う日米分断
結局のところ、ロシア政府が打ち出す「経済特区」構想は、北方領土からの日本外しにあるようだ。日本には今後、口を出させないという思惑が透けてみえる。ミシュースチン氏の発言は日本への最後通牒であり、代わって北方領土の共同経済活動をテコにアメリカとの外交関係を修復しようというラブコールといえる。
昨年のロシア憲法改正で、領土の外国への割譲を禁止する条項が盛り込まれており、プーチン政権には二島さえ返還する気はさらさらない。
領土交渉をめぐって、プーチン氏が日米安保条約の存在をたびたび非難しており、日米同盟はロシアの安全保障にとって目障りでしかない。となれば、北方領土にアメリカ企業を本格的に誘致すれば、日米関係はこじれそうだ。プーチン氏のねらいは、日米分断にあろう。
そして、そこから先の話。近年の中国の台頭に警戒感を強める米露が、北方領土を舞台に本気で結託する情勢になる。経済協力からさらに踏み込むとどういう事態になるのか。
中国包囲網を構築するために「アメリカがロシア領土の北方領土に軍事基地の建設計画あり」のニュースが飛び込む……寝苦しい真夏の夜の悪夢のような事態にならないことを筆者は望む。