日本政府への挑発ともとれる発言

鬼気迫る表情を浮かべるミシュースチン氏は、クリルを「経済特区」に指定するとぶち上げた。外国資本を呼び込むために法人税をはじめ付加価値税、固定資産税などを減免する「効果的で画期的な自由貿易地域」に定めるという。そして発言のくだりで、彼はこう語気を強めた。

「多くの投資家やビジネスマンにとって、すばらしい提案になるでしょう。これは西側の投資家たち、そして日本人にも同様に興味深いものだ」

わたしの知る限り、ロシア政府の高官が北方領土の開発に「西側」の協力を訴えたのはこれが初めてのことである。その一方で、ミシュースチン氏のトーンが日本政府への当てつけのように響いた。まるで「まあ、期待していませんが、ついでに日本も加えておきます」と挑発しているかのようだった。

日本はすっかりナメられている。そもそも、北方領土の経済特区は日露間で持ち上がった構想だ。プーチン氏が2016年に来日した際、安倍晋三前総理と北方4島での「共同経済活動」の実現に合意した。

ただ、5年を経過した今でも、具体的な活動内容が定まっていない。それどころか、どのような分野で実現可能なのか、日本からの調査団が満足に現地入りできていない。新型コロナ感染拡大だけが理由ではない。

共同経済活動をめぐって日本側は、主権をあいまいにして両国の法的な立場を害さない「特別な制度」を求めているが、ロシア側は自分たちの法律の適応を主張し、受け入れない。