日本でも隊列走行の商用化に向けて実験が重ねられている

一方、日本ではNEDOが、2008年度から大型トラックの自動運転による隊列走行の実験を開始した。その最初の成果として2010年には大型トラック3台で時速80キロ、車間距離15メートルの隊列走行に成功した。2013年には、車間距離を4メートルにまで接近させることに成功した。2016年度には、トヨタグループの総合商社である豊田通商が経済産業省と国土交通省の研究開発・実証事業を受託した。これには東大発の自動運転開発ベンチャー「先進モビリティ」も参加している。2017年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、高速道路でのトラック隊列走行について早ければ2022年の商業化を目指すことが、目標として策定された。

2018年6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」では、隊列走行の商業化を目指した目標が引き続き明示されると同時に、後続車無人隊列走行システム開発の前提として、より現実的な後続車有人隊列走行システムの商用化を目指すことが盛り込まれた。経済産業省と国土交通省では2018年から翌19年にかけて、有人と無人の隊列走行の実証実験を新東名高速道路で行っている。なお、無人隊列走行であっても安全のため、後続車に運転手を乗車させている。

5Gで隊列走行はどう変わるか

次に、5Gが隊列走行にどのように活かされているのか、見てみよう。2017年度からの3年間、総務省の5Gに関する調査検討事業として、実証実験が行われた。5G移動通信システムが持つ「超高信頼低遅延」「超高速大容量」の無線能力が評価されて、隊列走行に導入されることになったのだ。

CACCでは先頭車と後続車との間で、常に情報がやりとりされる。先頭車からはアクセルやブレーキ、ハンドル操作の情報が送られ、後続車の運転操作が自動的に行われる。後続車からはカメラや電子ミラーの映像が先頭車両に伝送され、先頭車の運転手が車線変更しようとする際などの安全確認ができるようになっている。そのやりとりには、わずかの遅れも許されない。

例えば時速80キロで走行するトラックは、1秒間に約22メートルも移動する。5Gの伝送遅延は4Gの10分の1とされているだけに、より一層の安全性が確保され、より高速での走行が可能となる。車間距離も、遅延が少なくなる分、より短くすることができるようになる。

車両間で通信される情報は、大きく2種類に分けられる。ひとつは車両の位置情報をはじめ、アクセルやブレーキ、ハンドル操作など車両制御系の情報だ。数十バイトから数百バイトという少量のデータが頻繁にやりとりされる。もうひとつは後続車の周囲を監視するなど、映像監視系の情報だ。トラックに搭載されたカメラや電子ミラーで撮影された映像が、後続車から運転手のいる先頭車へリアルタイムで伝送される。この際の伝送は数十メガbpsという大容量のデータとなる。