ウッドチップ敷いた容器内でバクテリアの力によって分子レベルに分解

葬儀を終えた遺体は、マメ科植物でできたオーガニックウッドチップが敷き詰められた容器に入れられる。さらに堆肥化を促進させるために、二酸化炭素や窒素、酸素、水分などを制御できるカプセルの中に入れられ、そこでバクテリアなどの微生物を増殖させて腐らせる。

遺体は、およそ30日をかけて分子レベルで分解され、土へと還っていく。その後は2~4週間かけて土を硬化させる。

リコンポーズ社のシアトルの施設には、すでに10基のカプセルが用意されている。そのエリアはグリーンハウスと呼ばれ、臭気を防ぐための高性能な空気清浄機などが備わっているという。

最終的には、遺体1体あたり85リットルほどの土壌ができる。この栄養豊富な土壌は、園芸用堆肥に使われたり、ベルズマウンテン保護林に撒かれて森林を構成する要素になったりして、新たな命を育む源泉に生まれ変わる。

隠岐の海士町の無人島での散骨の風景
撮影=鵜飼秀徳
隠岐の海士町の無人島での散骨の風景

同社によれば、火葬や土葬と比較して、コンポスト葬を選択した場合は1トン以上の二酸化炭素を節約できると試算している。

遺体1体あたり85リットルの土壌、費用は約60万円、予約殺到550人

気になる価格だが、同社のコンポスト葬は5500ドル(約60万円)。米国では、一般的には火葬費用が6万円程度、葬儀から遺体安置施設の利用料、納棺料、墓地代などを含めるとトータルで死後の費用は平均550万円ほどかかる。その点、コンポスト葬では火葬費や墓地、墓石代などが不要で、割安感はありそうだ。

米国の宗教専門メディア「Religion News Service」によれば、サービス開始から3カ月後の2021年2月には世界各国からの予約が550人に達したという。今後はさらに増えていきそうである。

なぜなら、欧米では徹底したエコロジストは一定数いるとみられるからだ。近年のSDGs(持続可能な開発目標)の広がりなどによって、葬送のあり方を再考する議論が深まりつつあった。

そこへ、新型コロナウイルスの爆発的蔓延が追い討ちをかけた。現在、米国での死者の合計はおよそ61万人。遺体安置施設はあふれかえり、葬儀や埋葬もままならない状況が続いた。

通常の弔いができなくなる中、哲学的に死をとらえる人が増えた。その中で、「死後の自然回帰」を強く支持する人が現れてきているのだろう。