「信頼醸成に資する取り組みの扱いは素っ気ない」と揶揄

朝日社説は書く。

「中国の国防費は日本の防衛費の約4倍。潜水艦や艦船、戦闘機など近代的な装備の数でも自衛隊を大きく上回る――。中国の急速な軍事力の増強ぶりを、白書はグラフや写真を織り交ぜて紹介。尖閣諸島周辺では『力を背景とした一方的な現状変更の試み』が『執拗に継続』されているとして、中国海警船の活動が過去最多、過去最長を更新したデータを列挙した」

グラフや写真、それに具体的データの掲載は、中国の脅威を伝えるためには欠かせない。それを朝日社説は「いずれも、国民にわかりやすく現状を訴える狙いがあるのだろう。他方、防衛当局間の交流など、信頼醸成に資する取り組みの扱いは素っ気ない」と揶揄するから情けない。朝日社説は中国の脅威や国防の重要性をどう考えているのか。

中国は「脅威」なのか、それとも「懸念」なのか

さらに朝日社説は防衛白書が「脅威」を使わずに「懸念」を使用したことを評価し、次のように書くから驚かされる。

「ただ、中国に対する全般的評価は、『安全保障上の強い懸念』であるという、昨年の表現を踏襲した。防衛省内では、『脅威』など『懸念』より強い文言とすべきかをめぐって議論があったようだが、最終的には前回同様に落ち着いた。妥当な判断といえる」

どうして「妥当な判断」なのか。間違った判断ではないか。ちなみに、前述した産経社説は「物足りなさがある」と指摘していた。中国は「脅威」なのか、それとも「懸念」なのか。沙鴎一歩は産経社説のほうが現実を正しく捉えていると考える。

朝日社説は主張する。

「攻撃的な発信が対抗措置を招き、相互不信から軍拡競争へつながる事態は避けねばならない。また、偶発的な衝突がエスカレートしないよう、意思疎通を緊密にすることも不可欠である」

安全保障上、「軍拡」よりも「軍縮」を求め、意思疎通を緊密に実行することは大切である。だが、相手は共産党の一党支配下にある中国だ。あからさまに自国の利益を最優先し、他国と争う覇権主義を厭わない国家と意思疎通を図ること自体が難しいのである。朝日社説はそこをどう考えているのか。