広島で平和を祈念したという“実績”が欲しかった

週刊文春によれば、バッハの任期は2025年までだが、その彼が最後に狙っているのは「ノーベル平和賞」だというのだ。

元西ドイツのフェンシング金メダリストとはいえ、クーベルタンの五輪精神を蔑ろにし、莫大なカネのかかるバカ騒ぎの祭典にしただけの男になぜ、という疑問は当然だろう。

その切り札としてバッハがやろうとしているのが、北朝鮮へ行って金正恩朝鮮労働党総書記と会い、拉致問題を解決する“仰天”プランだというのである。

そのためには、何としてでも原爆被災地・広島を訪れ、被爆者と面会する必要があったのだろう。7月16日、地元民が反対する中、平和記念公園へ行き、被爆者の梶矢文昭と短い対面をして、すぐに帰京してしまった。

「バッハ氏にとっては、広島を訪問し、平和を祈念したという“実績”が何より大事だったのでしょう」(組織委最高幹部)

広島平和記念館
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利用できるものは何でも利用するが、用済みになれば非情に切り捨てる。それがバッハ流処世術のようだ。

IOCの会長選を“鳥人”といわれたウクライナの棒高跳びの英雄、セルゲイ・ブブカと争ったとき、セネガル人のラミン・ディアク(世界陸連前会長)に協力してくれと頼み込み、票をまとめてもらって当選した。

「北朝鮮に行きたい」と安倍前首相に要望

だが、ディアクに東京五輪招致で日本側から賄賂をもらっていた疑惑が出て、フランス当局の捜査対象になると、「バッハ氏はIOC会長として捜査当局に陳情すらしなかった」(IOC関係者)。

バッハが金正恩と会談したのは2018年3月だったという。その1カ月前の平昌冬季五輪で、韓国と北朝鮮の女子アイスホッケー合同チームができて話題になった。

バッハと会った金正恩は、「凍り付いた北南関係が五輪を契機に氷解したのは、IOCの功労だ」と述べたそうである。

その後も、森喜朗や安倍晋三に取り入り、2019年のG20大阪サミットに招かれたときには、「スピーチで北朝鮮に触れたい」といい出して森に止められた。安倍には、「北朝鮮に行きたい。拉致被害者の救出に協力したい」と申し出て、安倍から「こちらのルートでやります」と断られている。

しかし、この男のことだから、機を見て北朝鮮に入り、平壌での冬季五輪開催をエサに、金正恩と拉致問題を話し合うということをやりかねない。

IOCが資金面をバックアップして平壌冬季五輪を開催させるが、その前に拉致被害者たちを日本へ返せ。万が一、それが実現できればノーベル平和賞も夢ではないかもしれない。