どさくさに紛れて懲戒請求の取り下げまで和解案に盛り込む

Aさん側の怒りの矛先は、PwCジャパン側の代理人弁護士にも向けられている。当初、代理人弁護士らは中立を装ってAさんから話を聞き出し、その後、寝返るようにしてPwCジャパン側の弁護人に回っているからだ。

Aさん側は森・濱田松本法律事務所に所属する代理人弁護士について、第二東京弁護士会に懲戒請求を提出。本来、PwCジャパンの利益と代理人弁護士に対する懲戒請求は何の関係もないはずであり、これをどさくさに紛れて懲戒請求の取り下げまで和解案に盛り込むのは弁護士倫理に違反しているであろうというわけだ。

Aさんが和解案を蹴ると、PwCジャパン側の弁護士らは「和解に応じない場合は控訴する」と通告してきた。PwCジャパン側は裁判が始まっても準備書面すら提出しようとしなかったのに、もう控訴をちらつかせているのだから、一審での敗北をすでに見越しているのだろう。トイレで用を足す前にお尻を拭くようなもので、せっかちな話だ。

「実は多くの人が短期間で辞めさせられている」

7月13日にようやく原告と被告の双方が証人の選定に入り、原告のAさん側は筆者を証人に立てたい意向を示しただそうだ。被告の弁護団はこれに反対しているが、それはもっともな話で、筆者が証人として出廷したり陳述書を提出すれば、PwCジャパン側はその中身に何を盛り込まれるか、分かったものではないからだろう。

なにしろ社内で「メディアの取材に応じるな」とお触れが出ているにもかかわらず、今もPwCジャパン関係者からの情報提供は続いている。その中には、倫理上の問題ではなく、法的な問題を含んだ、かなり刺激的な内容の内部資料(たとえば監査先に関わる情報など)の提供を申し出るケースもあった。

これには時期的な影響もあるようだ。PwCジャパンでは5月が業績評価の面談時期で、内部からは「実は多くの人が短期間で辞めさせられている。手持ちの案件が乏しいのはPwCジャパンの事情なのに『働いていない』として人事評価を下げ、年収を半期ごとに下げていく」という説明があった。