大量のインスリンが出てどんと血糖値が下がった状態を低血糖といって、そのときの人間の精神的な状態は、うつ病の症状とそっくりなのだ。さらに、低血糖のときに必然的に出てくるアドレナリンとかノルアドレナリンには、精神状態を躁にする働きがあり、血管を収縮させたり、不安や恐怖を増幅させる作用もある。
料理番組やレシピ本の「落とし穴」
これほど危険なものなのに、血糖値を急激に上げるような商品は世の中に氾濫している。一般に、テレビのコマーシャルや新聞広告で宣伝されていれば、その商品は信頼していいと無意識的に思わされていて、「安全ではないかも?」などと疑うことは基本的にない。そこが落とし穴だ。
そもそも、テレビの料理番組や料理本のレシピを見ると、当たり前のように砂糖を調味料として使っている。あらゆる料理に砂糖がいることになっている。なるべく避けなければいけないものを、わざわざ積極的に摂取しようとしているのだ。
いかに情報が歪曲されているか、そしてそういう情報に洗脳されてしまっているか。きちんとした素材できちんとした料理をすれば、酒だけで十分甘みは出るのだ。みりんさえ使う必要がない。もちろん私がかつて経営していたレストランでも、その後プロデュースした店でも、砂糖は追放してあった。私がそれほどうるさく言うのは、それほど危険だからだ。
WHO(世界保健機関)では、成人も子どもも一日当たりの糖類(砂糖や高果糖コーンシロップなど炭水化物ではないもの)の摂取量を、全摂取カロリーの5%未満にすべきだと勧告している。
一般に、成人は一日平均1800~2200kcal摂取していると言われているので、計算の便宜上2000kcalとすると、そのうちの5%は100kcalとなる。
ジュース1本だけでWHOの基準を超える
例えば、缶コーヒー1本に含まれる糖分がだいたい100kcalだ。スポーツドリンクは、缶コーヒーよりもっと砂糖の量が多い。生の果汁などが入っていないペットボトルや缶のジュース類はさらに多く、1ℓ当たり角砂糖で20個分くらいの砂糖が入っている。缶コーヒーの6倍から7倍と考えた方がいい。
こういったものを1本飲んだだけでWHOの勧告量をはるかに超えてしまう。仕事の合間に何気なく気楽に飲んでいるかもしれないが、急激に血糖値を上げることになって、それが感情を大きく乱す原因になっているかもしれない。
一緒にチョコレートだのクッキーだの食べていれば、もっと砂糖の摂取量が増えているだろう。日本人の5人に1人が糖尿病またはその予備軍と言われていることにも大いに関わっていると考えなければならない。