無痛分娩を「ジェンダーの問題」に閉じ込めてはいけない
【髙崎】日本での無痛分娩の普及に関する議論を前に、先生が今、伝えたいことはありますか?
【宋】麻酔分娩に関して取材を受ける際、私は最初にひとつ、お願いをしています。「これから医学的・制度的なお話をしますので、そこからより具体的な議論ができる記事にしてください。”女性の痛みが軽視されている”という、ジェンダーの結論でまとめないでください」と。そのようにまとめてしまうと、具体的な議論がなかなか先に進まないからです。
もちろん、根本にはジェンダーの問題があります。これまで、女性の出産の痛みは「産む人が我慢すればタダで済むこと」と考えられてきました。家事育児のように、「女性が背負えばタダ」というシャドウワーク扱いをされてきた。それは問題だと認識を共有した上で、令和の時代では具体的に、本当に変えるための議論を進めたいのです。
産科に不足している麻酔科医を、どう育成するか? 医療の質と産科医のモチベーションを保ちつつ、集約化を進めるには、どうすればいいのか?
妊婦さん方には、このような背景を理解した上で、麻酔分娩のメリットとデメリットをしっかりと知ってほしい。そして自分がどのようなお産をしたいかを考えて、と伝えたいです。
さらに言うなら、自分が何をすれば日本のこの状況を変える一歩になるのかも、一人一人に是非、考えてほしいと思います。お産に関わる人、関わらない人、みんなで変えていきましょう。