「母になったからこそ、もっと尖りたい」
昨年には、長男が生まれた。詞や曲に変化はありますか? と尋ねると、いつも笑顔の岡嶋さんの目に、キュッと力がこもった。
「子ども向けの曲を書く依頼もありますし、そういう仕事もどんどんしていきたいです。でも、自分としては母になったからこそ、もっと尖りたいし、メッセージ性の強い曲、エッジの効いた曲をより多く届けていきたいですね」
取材の日、あるアニメのエンディングテーマ曲の仮収録を見学させてもらった。
そこには作詞作曲を務めた岡嶋さん、現在、作曲家、レコーディングエンジニアとして引っ張りだこのMEGさん、この歌を歌う声優さん、プロデューサーの4人が集い、まさにコライトしている姿があった。
この日のために用意してあったメタル調の曲が、その場のアイデアや意見で、どんどん姿を変えていく。そのなかでボーカルディレクションも担う岡嶋さんは、自らマイクを握り、声優さんに新しい歌い方を提案していく。
終盤になり、全員が「これだ!」と一致した形でレコーディングが始まって、声優さんが歌い終えた瞬間、自然と拍手が起きた。スタジオの片隅で息をひそめてやり取りを眺めていただけの僕も、鳥肌が立った。
子育てしながらも年間50~100曲の作詞、作曲に携わっている岡嶋さんは今、まさに尖り切ったことを計画している。フリーランスでPRの仕事をしている夫と息子、家族3人でキャンピングカーに乗り、東京を拠点に日本全国を巡りながら、作詞、作曲をするのだ。
出発予定は、8月。緑の絨毯が拡がる北海道の草原やどこまでも青く澄んだ沖縄の海岸で、どんな歌が生まれるのだろう。海外ドラマのように、彼女の新しいシーズンが幕を開ける。
写真=岡嶋かな多さん提供