彼女を何度変えてもヒモでありつづけた
まったく苦に思わない家事をやることで会社に行かずにすむうえ、生きるうえでの必要経費がかからずに生活できてしまえることは、やっぱり少しズルい生き方であるという自覚はあります。
それでは、「プロヒモ」とはどういうことでしょうか。
「プロヒモ」に対し「アマヒモ」がいるわけでもありません。
「これまでとは一味ちがうヒモだぜ!」と強調したかった理由による造語にほかなりませんが、なにが「一味ちがう」のでしょうか。
僕は、「当方ボーカル、それ以外募集」と音楽になにも造詣がないのにもかかわらず武道館でのライブを夢にかかげたり、パチスロに行ったりすることが日課のイケメンでもありません。
みなさんが想像されるテンプレートなヒモ像とも異なりますが、それは別に「プロ」と呼ぶための材料にはならなそうです。
ヒモは一人の女性に「ベタ惚れ」させ、切っても切れないドロドロした関係のなかで女性に養われているような印象があるかもしれませんが、僕は彼女を何度変えてもその女性の家に転がりこみつづけることに成功してきました。
それだけ「モテる」といいたいわけではありません。
何度も経由してきたということは、それだけ「フラれてきた」ことも意味するのです。
最後は「お前との未来が見えない」「待てども待てどもお前は会社に勤めない」と結構あっさりと関係は終わってきました。
それでも飼ってくれそうな女性を見きわめ、その人の家に寄生しつづける努力だけは惜しまなかったことで、次の飼い主がまえの飼い主の家まで車で僕を迎えにきたこともあります(まるでペットの引きわたしと変わりません)。
ヒモ生活で浮かせた家賃は1560万円
さらには浮かせたお金の額にも「プロ」が見いだせるかもしれません。
女性の家によっても異なりますが、家賃は6万~22万といったところでしょうか。プラス光熱費と食費が13年分浮いた計算になります。これまでの寄生先を順に並べると、こんな感じです。
1軒目 所沢のマンション 家賃7万円
2軒目 明大前の木造アパート 家賃6万円
3軒目 勝どきタワマン 家賃22万円
4軒目 上野のマンション 家賃12万円
5軒目 松戸のマンション 家賃8万円
6軒目 中野のアパート 家賃6万円
紆余曲折あり、いまは沖縄の家賃7万円のマンションに住んでいます。光熱費をふくめ平均約10万円が毎月浮いたとして、12カ月が13年なので……、10万円×156カ月=1560万円くらいでしょうか。
これ、ひと財産ですよね。
とはいえ具体的な家賃を聞いたことも、金額を数えていたわけでもありません。
取材のときに初めて計算し、だれよりも自分が一番驚きました。
そんな金額、口座にマックスで20万しか入ったことがない僕からしてみれば天文学的な数字です。ゲームやテレビ番組以外で見たことがありません。
他人事のようですが、僕自身「プロヒモ」とはなんなのかわかっていません。
理解してもらいやすいように自称していますが、僕は「ヒモ界で天下をとってやる!」なんて誓ったおぼえもありません。
自分自身「ヒモの強い版」くらいにしかとらえていないのです。