「ワクチン接種をめぐる混乱が『逆風』になった」

7月6日付の朝日新聞の社説は、冒頭部分で「感染が再拡大している新型コロナ対策や目前に迫る東京五輪への対応など、菅首相の政権運営に対する都民の厳しい審判とみるべきだ」と訴え、「事実上の敗北といってもいい」と指摘する。見出しも「東京都議選 菅政権への厳しい審判」である。

さらに朝日社説は菅首相に対し、「首相はきのう、選挙結果を『謙虚に受け止める』と語ったが、うわべだけの言葉では信は得られないと、心すべきだ」と求める。賛成である。

朝日社説は「与党内では、ワクチン接種をめぐる混乱が『逆風』になったとの見方が広がる」と指摘し、こう主張する。

「加速化の旗をふる首相の下、幅広く職域接種を呼びかけたが、ワクチンの供給不足で休止に追い込まれた。はしごをはずされた形の関係者の間に、戸惑いや不満が広がるのは当然である。政府の準備や説明は十分だったか、反省が必要だ」

「はしごをはずされた形の関係者」という表現に、安倍政権を引き継いだ菅政権を嫌う朝日社説らしさが透けて見えるものの、ワクチン接種の混乱が都議選に響いたことは間違いない。

予防接種センター
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「熱意」という点からすれば、安倍晋三前首相のほうが上

朝日社説は「東京五輪についても、『開催ありき』で突き進む政権と都民の意識の乖離は大きかった」と書いたうえでこう指摘する。

「朝日新聞が告示後に都民を対象に行った世論調査では、延期・中止が6割、開催する場合も無観客が6割超を占めた。首相が繰り返す『安全安心な五輪』に、足元の都民が信を置いていないことは明らかだ。『無観客』での開催を公約に掲げた都民ファが自民に迫る第2党となり、『中止』を強く訴えた共産党が議席を積み増したことを重く受け止めねばならない」

世論調査で、「延期・中止が6割」というのはかなりのインパクトがある。菅首相の「安全安心な五輪」に対し、「都民が信を置いていない」と指摘されても仕方がない。

さらに朝日社説は「首相は告示日に党本部前で第一声をあげただけで、街頭演説は一度も行わなかった。コロナ禍で人が集まる『密』を避けたという言い分はわからぬでもないが、この機会に自らの政策を国民に直接訴えたいという意欲は感じられなかった」とも書く。

たしかに記者会見の様子をテレビで見ていても、意欲が伝わってこない。一部から強い反発も招いたが、「熱意」という点からすれば、安倍晋三前首相のほうが上だろう。だから安倍氏に賛同する人たちもいた。菅首相は反発も賛同もないため、このまま沈没してしまう恐れがある。