満員電車でクラスターが発生しない2つの理由
通勤電車でクラスターが発生したという報告は、いまだありません。意外かもしれませんが、私は感染伝搬の場にはなっていないと思っています。理由は二つあります。
一つは、クラスターが発生していたとしても分かるわけがないから。公共交通機関は、毎日、決まった車両に同じ顔ぶれだけが乗っているわけではありません。もし車両の中に感染した人がいたとしても、一人ひとりを探し出して感染経路を追うなどということはできません。もしかしたらあるかもしれないけれど、分からないのです。
もう一つの理由は、日本の通勤電車の乗客は皆きちんとマスクをしていて大きな声で話す人もおらず、中に感染者が紛れ込んでいたとしてもエアロゾルが広がるリスクが極めて低いからです。ユニバーサルマスキングの典型的な例とも言えます。
何もせずに咳やくしゃみをする人がいればリスクはありますが、喋らず呼吸をしているだけなら、ほんの少ししかウイルスは出していませんし、その人が不織布マスクをしていれば、出る量はその少ない量のさらに100分の1になります。
鉄道会社も、車両に換気装置を備えたり窓を開けたりするなど換気に力を入れています。また、東京の山手線などは1~2分間隔で停車するので、頻繁にドアが開き、つねに換気されているのと同じ。
駅間が長い東海道線のような路線でも、皆がマスクをしてじっと乗っているだけなら、まず危険はありません。私は怖いと思ったことはありません。
バスでもマスクをして大声で話さなければリスクはない
新幹線や飛行機は、長時間乗ったままでドアや窓も開きませんが、つねに換気されていますし、今時の航空機では座席ごとに個別の空気の流れが計算されています。かつて空調が故障した飛行機の中でインフルエンザ患者のクラスターが出たことはありますが、あくまでも例外的事例です。
新幹線はJRの説明によれば、かなりの換気がなされていて、その模式図まで公開されています。その図を読み込んでいくと、どうも座席配置の中では窓際の席が一番新鮮な空気環境が得られそうでおすすめです。
バスはどうでしょう? バスの中での集団感染の報告が中国からありましたが、結論から言うと近距離バスでは、窓を開けられれば換気は十分です。
車中で皆が適切にマスクをして静かにしていればというのが大前提ですが、「通勤電車」のところでお話ししたのと同じく心配はありません。長距離バスでも基本的に同じです。私の勤務先の職員の話ですが、東北地方でも流行が大きくなっていた時期のこと、帰省時に地震が発生しました。
その影響で、新幹線は使えなくなり、仕方なく盛岡から仙台まで長距離バスを使って数時間かけて戻らなければならなくなりました。補助席を使うほど満席で心配に思っていたところ、乗客全員がしっかりマスクをして、乗車から降りるまでの間、誰一人として一言も喋らなかったそうです。
それなら問題はありません。皆が怖いと思っている時は大丈夫です。窓も開かない密な車内であっても、乗客同士がマスクをしないで大声で会話をするようなことがなければ危険はありません。行動次第で、リスクはかなり抑えられます。