アリババに対しても当局が圧力
2020年のアリババ集団によるネット通販セール「独身の日」が、11月12日深夜0時に終了した。セール期間中の取扱高は4982億元(約7兆7000億円)。2019年の2684億元を大きく上回った。
ところが、セール前日の10日に、規制当局である国家市場監督管理総局が、独占的な行為を規制する新たな指針の草案を公表した。取引先の企業にライバル企業と取引しないよう「二者択一」を求めることは法律違反にあたるとしている。
このように、アリババを取り巻く事業の環境も急激に変化している。この措置を受けて、11日に香港株式市場でアリババの株価は前日比9.8%安となった。
「想定外」だったIT企業の急成長
アリババやアントが急成長できたのは、これまで、その活動に対する規制があまり強くなかったからである。
もともと中国の改革開放政策は、鄧小平の「抓大放小(大をつかみ小を放つ=大企業は国家が掌握し、小企業は市場に任せる)」という方針によって行われてきた。
4大商業銀行(中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国農業銀行)は「大」であると考えられたので、当初は国有企業だった。現在は、民営化されたが、公的企業の色彩が強い。
それに対してeコマースは民間に任された。そして、自由な経済活動が認められた。あまり重要な産業とは思われなかったからだ。
ところがその後、インターネットの普及に伴ってeコマースが急成長し、そこで用いる通貨としてAliPayが作られた。それが一般の取引にも用いられるようになり、多数の人がAliPayを使うようになったのだ。現在、その利用者数は10億人を超すといわれている。
共産党の逆襲
こうした事態は、中国共産党が考えていたものとは異なる展開であったに違いない。そして、これまでも金融や情報を国家の手に取り戻すための方策を模索していたに違いない。
実際、規制は徐々に強化され、AliPayなどの特権的地位は、徐々に制限されてきた。
「自由な経済活動によってこそ経済が発展する」というのであれば、国家が経済活動をコントロールするという共産党の基本的な理念に矛盾してしまう。現在の状況が続けば、共産党は市場経済の中に融解してしまう。
市場経済活動=自由な経済活動と共産党の理念は、もともと相容れないものだから、どこかで衝突が起きるのは必然だった。いま起こっているのは、その最初の表れなのかもしれない。