ハイテク企業に対する中国での規制強化の動き
もともとアリババは、ファーウェイなどとは違って、国の後ろ盾がない企業だった。
eコマースは国の産業に大きな影響がないと考えられたために、これまで比較的自由な活動が認められてきたのだ。ところが、実はeコマースや電子マネーが重要であることが分かってきた。
このため、中国当局は、2、3年前から金融の管理強化に乗り出していた。ここにきて、巨大ハイテク企業への圧力を一段と強め、アントとマー氏を標的にしているのではないかとの見通しが広がっている。さらに、ビッグデータの運用方法にも制限がかかる可能性があるといわれる。
アントの企業価値評価は4000億ドルに達してしかるべきだとの見方もあった。そうなると、評価額は資産規模で世界最大の銀行である中国工商銀行に並ぶ。こうした状態は、放置するわけにはいかないのだろう。
アントの上場中止は、中国の技術開発に大きな影響を与えると考えられる。それは、中国の長期的な観点から考えると、決して望ましいものではない。
「ウミガメ族」が支えた中国経済の発展
もともと中国におけるITは、中国の若者がアメリカの大学院で勉強し、それを中国に持ち帰ったことによって発展したものだ。
アメリカにとどまった人たちも最初は多かったのだが、中国での経済発展に伴って、中国に戻る若者が増えたのだ。彼らは「ウミガメ族」と呼ばれる。
こうした人々が中国の著しい発展を支えたのは、間違いない事実だ。それは中国国内において活躍の機会があるという期待に基づいたものであった。
そして実際、中国国内では、アリババやアントだけでなく、多数のユニコーン企業が現れた。その状況は、アメリカのそれに似たものになった。中国でも活躍の機会があるという期待が、これまでは満たされてきた。