コロナ禍の最中に日本ではオリンピックが開催されようとしている。なぜそうなってしまうのか。『人新世の「資本論」』(集英社新書)著者の大阪市立大学大学院の斎藤幸平准教授と、共著『正義の政治経済学』(朝日新書)を出した衆議院議員の古川元久さん、法政大学の水野和夫教授の鼎談をお届けしよう――。(前編/全2回)

経済の目的を「成長」から「幸せ」へ

古川元久氏
古川元久氏(撮影=朝日新聞社)

【古川元久(以下、古川)】斎藤さんの『人新世の「資本論」』(集英社新書)を拝読し、こういう形でマルクスを理解するアプローチがあることを学ばせてもらいました。斎藤さんはこの本で、「資本主義では現代の諸課題は解決できない」ことを語り、「脱成長」を理念とする新しいコミュニズムの必要性を説いておられます。

私も、経済成長が自己目的化した現在の資本主義は、さまざまな弊害やひずみを生み出していると思っています。本来、経済成長の目的は成長そのものではなく、成長の先に目指している幸せのほうです。