平等な社会ほどかえって序列が生まれやすい
組織のメンバーは、この「偉さ」を含んだヒエラルキー(階層)の序列を受け入れなければならない。さもないと共同体の中で干されたり、有形無形の制裁を受けたりする。いわゆる忖度や追従なども、そうしたタテ方向の圧力がもたらすものといえる。忖度と引き替えに重要な情報を教えてもらえたり、人事に手心を加えてもらったりする可能性がないとはいえないのだ。
メンバーの序列は、非公式な集団の中でもしばしば生まれる。いわば擬似的な共同体型組織をつくり出すのである。学校生活を送る子どもたちの間で生まれる「スクールカースト」や、ママ友の中にできる「ママカースト」などはその典型的な例である。また「長幼の序」の文化が残る日本では、仲間内でも年齢や集団に属している年数によって序列が決まる場合も多い。
注意すべき点として、日本のように同質的な社会では外からみると取るにたらないほど小さな差でも、序列を意識させるのに十分な差となりうることがあげられる。役所や伝統的企業では、いまでも給与号俸が一つ違うだけで名刺交換の順番や宴会の席順が決まってくるし、「仲良しグループ」の中では序列に応じて敬語の使い方まで微妙に使い分けられているケースがある。
同質的な社会、建前上は平等な社会ほど、かえって序列化が生じやすいという面もあるのだ。
3.団結するために共通の敵をつくる
第三に、集団を引き締め、共同体の団結を強める行動がとられる。
そのためにしばしば用いられる手段が、外部に敵をつくることである。国家レベルではナショナリズムが特定の政治的イデオロギーと結びついたとき、しばしば仮想敵国をつくり、外国人の排斥やヘイトスピーチのような形になってあらわれる場合がある。
同じく政治の世界では、地方自治体の首長が政府のコロナ対策をめぐって激しく政権批判を繰り広げたのにも、住民意識を高揚させ、ひいてはそれを自らの支持率上昇に結びつけようという思惑が透けてみえる。
また企業の経営者が社員に、スポーツ・チームの監督が選手にライバルの存在を意識させて内部を引き締めたり、士気を鼓舞したりするのも常套手段になっている。
職場や地域でも、その場にいない人の悪口やうわさ話をするのが人間関係の潤滑油になり、仲間内の結束を高めることはよくある。
いずれのケースでも、メンバーは共通の「敵」に立ち向かうため利害や主張の違いを棚上げし、大同団結するよう強いられるわけである。