そのため組織に対する忠誠や献身の度合いが高い者ほど、組織の中枢に位置づけられる傾向がある。創業者一族が経営の中枢に置かれる理由の一つはそこにある。また男女雇用機会均等法があるにもかかわらず、女性は昇進などの面で男性より不利に扱われることが多かった。

忠誠を求め、ほかの世界から切り離す

その背景には、女性は男性に比べて家庭や地域社会への関わりが強いので、会社という疑似共同体に対して全面的にコミット(献身)できないという認識がある(それこそ統計的差別であり問題なのだが)。

もっともメンバーにそこまで忠誠や献身を求めるのには、企業の立場からみて合理的な理由もある。組織に対して功利的、打算的な関わり方をする人は会社が苦境に陥り、待遇が悪くなったら辞めてしまうかもしれない。災害時などに公務員が割に合わないからといって平時と同じ働き方しかしなかったら、行政は滞ってしまう。だからこそ逆境でも損得勘定抜きでがんばってくれる人を求めるのである。

いずれにしても個人の立場からすると、一つの共同体に忠誠を尽くそうとすると、それだけ外の世界との関係は保ちにくくなる。したがって共同体への忠誠を求める圧力は、メンバーをほかの世界から切り離す圧力でもあるのだ。

2.「偉さ」の序列で組織が決まってしまう

第二に、メンバーは「分」をわきまえ、序列に従うことが要求される。

閉鎖的な集団の中は、だれかが得をすればだれかが損をするという「ゼロサム」構造になっている。それを放置しておけば、互いに争い合うことになる。T・ホッブズのいう「万人の万人に対する闘争」状態だ。したがって共同体の内部を安定させるための秩序が必要になる。野生のサルなど動物の集団にみられるように、メンバーの序列は争いによるロスを防ぎ、安定した秩序をもたらす。

日本の共同体型組織は、純然たる機能集団と違って非公式な人間関係や感情などによって結びついている部分が大きい。そのため内部の序列は単なる権限の序列にとどまらず、人格的序列の様相を帯びる。俗っぽい表現をすれば、「偉さ」の序列である。

ちなみに机の配置や大きさの違いなどは、その序列をあらわすシンボルである。たとえるならライオンのたてがみや牡鹿の角のようなものだ。そして共同体型組織はメンバーの入れ替わりが少ないので、いったん序列ができればそれが固定化しやすい。