警察官7人で囲み、2時間かけて現行犯逮捕

参考までに私が過去に弁護人として関わったケースを紹介します。

英会話教師の傍ら大学に通っていたデイビッド・メイソンさん(仮名、26歳)は、2018年11月末の夜、渋谷の繁華街を友人と歩いていたところを警察官に呼び止められました。

彼は来日後、米軍基地で働く日本人女性と結婚しましたが、在留資格の更新が認められず、オーバーステイとなっていました。しかし、日本人の配偶者として特別在留許可の申請をして、程なくそれが認められるところでした。

メイソンさんは、警察に求められるままにパスポートを提出して、自分は特別在留許可申請中であるから、オーバーステイではないと説明しました。警察官は突然彼の体に触れてきました。

その手が彼の股間こかん付近に触れたとき、彼はたまらず「ノー」「ドント・タッチミー」と言って後ずさりました。警察官は彼のズボンの股間付近を掴んだまま手を離しませんでした。そして、警察官は二人がかりで彼をその場に押し倒しました。

彼は「行かせてくれ」、「触らないでくれ」と繰り返し言いましたが、警察官は彼のズボンを手で掴んだままでした。警察官の数が増えて、7人の警察官が彼を取り囲み、腕を掴みました。

職務質問開始から2時間経過したとき、警察官はメイソンさんを入管法違反(不法残留)の現行犯で逮捕しました。この逮捕に伴う捜索・差押であるとして、警察は彼の所持品をその場で差し押さえました。

その中に大麻があったとして、今度は大麻所持の現行犯として逮捕しました。彼は手錠をかけられて警察署に連行されました。

「尿を提出するならトイレに行かせてやる」

警察署で尿意をもよおした彼は「トイレに行かせてほしい」と言いました。

すると警察官は「尿を提出するならトイレに行かせてやる」と言いました。彼は仕方なしに警察の採尿容器に尿を出して一旦は提出しましたが、最終的には提出を拒みました。しかし、警察は彼の意思を無視してその尿を科捜研の鑑定に送りました。

逮捕の22日後にメイソンさんは大麻所持で起訴されました。年が明けた2019年1月、彼の尿からコカインが検出されたとして、彼はコカインの使用で再度逮捕されました。また、彼が所持していた物からLSDとコカインも発見されたとして、それらの違法薬物の所持罪でも起訴されました。

メイソンさんは、それらは自分のものではない、尿から検出された物質も自分が使用したものではないと言って争いました。

私と私の事務所の和田恵わだ めぐみ弁護士が彼の弁護人に就任しました。われわれは、「警察による職務質問と所持品検査は、暴力を伴うもので『任意捜査』とはとうてい言えない、著しく違法な捜査であった。したがって、押収した物件や尿やこれらの鑑定結果は違法に押収されたものであって証拠能力はない」と主張しました。