「勝利は間違いない」レキシー・トンプソンの実力
ところが最終日のトンプソンは圧倒的なパワーを見せつけて笹生をネジ伏せにかかった。
スタートの1番パー5で難なく2オン、ピン下3mにつけてイーグルチャンスとしてバーディ。その後も180cmの長身とフィットネスで鍛え上げたボディビルダーのような肉体で、攻め続ける。攻撃は最大の防御というゴルフだ。これが彼女の言う「結果を考えずに楽しくプレーする」ということだったのかもしれない。
トンプソンのパワーゴルフの前にさすがの笹生も自分を見失い、2番、3番で連続ダブルボギー。1打の差は一気に5打に広がる。
トンプソンは前半で1つ伸ばして通算8アンダーとし、笹生へのリードは5打と変わらない。ここまでトンプソンの攻撃ゴルフは功を奏したように見えた。解説の岡本綾子でさもトンプソンの実力と経験を持ってすれば勝利は間違いがないと思ったようだった。
トンプソンは1995年生まれの26歳。19歳の笹生とは7歳の年齢差があり、3年前のANAインスピレーションというメジャー大会では、笹生はギャラリーのひとりとしてトンプソンに自らのグローブにサインをしてもらった憧れのゴルファーである。
それもそのはずでトンプソンは12歳で全米女子オープンの本選に出場して予選を通過し、天才少女と騒がれた。15歳のときに史上最年少プロとなり、16歳でツアー初優勝、それも最年少優勝を成し遂げ、19歳でメジャー大会のクラフトナビスコ(現ANAインスピレーション)を史上最年少で勝ち取る。
美人でスタイル抜群のうえに、攻撃一筋のゴルフは魅力満載、押しも押されもしない全米一の人気選手となった。そんな彼女の悲願は世界中の女子プロの誰もが手中にしたいと願う全米女子オープンのタイトル。その悲願がまさに達成されようとしていたわけである。
バックナインで起きる逆転ドラマ
しかし、ゴルフの試合では、特にメジャー大会はサンデーバックナインで勝負が決すると言われている。つまり日曜後半の9ホールで筋書きのないドラマが生まれる。
首位に立つ者がそのまますんなりと逃げ切れないことがとても多いのだ。追う者は強く、追われる者は弱い。そこに逆転のドラマが生じるというわけだ。
特にセッティングが非常にタフとなるメジャー大会はわずかのミスがボギーとなりダボにもなる。このザ・オリンピッククラブレイクコースはメジャー大会で数々のドラマを生んできた名門コースだ。
1955年の全米オープンではかのベン・ホーガンが無名のクラブプロ、ジャック・フレックに破れているし、1966年にはアーノルド・パーマーがビリー・キャスパーに大逆転負けを喫している。