韓国の裁判は「忖度司法」と呼んでも過言ではない

なぜ、ソウル中央地裁は3年前の大法院判決を否定するような判決を下したのだろうか。

5月7日付の記事「『韓国の裁判所も迷走』慰安婦問題を政治利用する文在寅大統領の姑息さ」でも指摘したが、韓国の裁判所は日本のように司法がきちんと独立していない。三権分立が十分でない。裁判所が政権の意向や世論の動向をにらんで判断を出すことがある。「忖度そんたく司法」と呼んでも過言ではないだろう。

韓国・ソウルにある高等法院
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いま文在寅政権は、対中国政策を推し進めるアメリカのバイデン政権の強い求めで日本との関係を改善させる必要に迫られている。大統領の任期も来年5月と残り1年を切り、文在寅大統領は切羽詰まった状況下にある。支持率も落ち込んでいる。ここで懸案の徴用工問題を解決し、バイデン政権の機嫌を取る必要がある。そうしなければ日韓関係どころか、米韓関係までも悪化し、次の大統領選で与党候補を勝たせることもできなくなる。

今回のソウル中央地裁の判決は徴用工問題解決の大きな糸口になる。

慰安婦訴訟でも最初の判決と正反対の判断を下している

今年1月18日、ネット上で文在寅大統領の新年記者会見が行われた。この記者会見で文在寅氏は徴用工問題について「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と述べ、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。

韓国の元慰安婦の問題についても、これまでの態度を改めて「韓国政府は日韓合意を公式的なものだったと認める」と語った。日韓合意とは日韓両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認し合った2015年12月の約束である。

2017年5月に大統領に就任した左派の文在寅氏は公約でこの日韓合意を否定し、2018年11月には慰安婦の財団も解散させた。韓国民の反日感情を利用して自らの政権を盛り上げようと企んだのである。

しかし、前述したように新年の記者会見では豹変ひょうへんするかのように態度を改めた。それを見たソウル中央地裁は4月21日、元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で慰安婦らの訴えを却下した。これは1月18日の最初の慰安婦判決とは正反対の判断だった。このときは多少驚かされたが、韓国の裁判は忖度司法なのである。