なぜか「レコメンド再生」に頼るように
ところが音楽における「選択の自由」が確立されたとたん、それと逆行するような現象が出現した。
例えば、曲を再生する順番を好きなように決められるiPodでは、あえて再生順を機械任せにしてしまう「シャッフル再生」が一般化し、それしかできない型番も発売された。また音楽ストリーミングサービス世界最大手のSpotifyでは、ユーザーが曲を選ぶのではなく、サービスを提供する側が曲を選ぶ「Discover Weekly」などのプレイリストが人気だ。
動画サービスでも視聴者が見たい番組を探すのではなく、サービス提供側が提案するレコメンデーション(お勧め)機能が主流となり、最大手のNetflixでは閲覧されている動画の8割近くがレコメンデーション経由とされている。
動画番組のオンデマンドサービスを手掛ける日本のWOWOWでも、レコメンド支援システムを実装し、顧客ニーズとのマッチング精度を向上させたところ、解約抑止率が30%向上したといわれる。
つまり、レコメンド機能を強化したことで、今までやめていったユーザーを引き止めることに成功したわけだ。自分でコンテンツを選ぶことができないユーザーに対して、レコメンド機能が見るべきコンテンツを伝えることで、ユーザーは喜び、サービスを継続するということである。
「どんな曲が来るか分からないワクワク感」謳い文句は本当?
Spotifyには「Spotify Radio(スポティファイ・ラジオ)」というアプリもある。
これはユーザーの好みに合わせて作成される自動再生リストであり、ベースとなるアーティストや楽曲、あるいはすでに作成されているプレイリストに基づいて作成される。その特徴は、ベースとなったアーティストや楽曲・アルバム以外からも曲が集められ、しかもそのリストが随時更新されていくという点だ。
例えば楽曲単位でリストを作ると、「その曲が好きな人に対して、アプリがお勧めする曲」がリスト化される。アーティスト単位でリストを作ると、そのアーティストを中心に、「そのアーティストと音楽傾向が近いアーティスト」「他のユーザーがそのアーティストと一緒に聴いているアーティスト」などが含まれてくる。
プレイリストは特定の曲を特定の順番で組み合わせたリストなので、どの曲がいつ流れるかがあらかじめ分かっている。一方のSpotify Radioは順番が決まっておらず、その結果「次にどんな曲が来るか分からないワクワク感」や「新しい曲との出会いの喜び」が期待できる、というのが謳い文句である。