日本の皇室で最も多くの団体を抱えておられるのが高円宮久子妃であり、2021年現在で29の団体に関わっておられるが、今年95歳のお誕生日を迎えられたエリザベス女王は実に600もの団体のパトロンを今も務め、コロナ禍にあってもZoomで関係団体の人々と会議を開いている。

そもそもが英国はヴィクトリア女王(在位1837~1901年)の時代から慈善団体に関わり、さらに英国のみならずカナダやオーストラリアといった「英連邦王国(エリザベス女王を国家元首にいただく国)」15カ国の団体にも王族が関わっている。

それゆえ日本の皇室とは桁違いの忙しさなのである。また、ベネルクス3国や北欧3国などの王室も、英国ほどの数ではないがそれでも王族各人が少なくとも2桁以上の団体に密接に関わり、文字どおり世界中を飛び回る多忙な生活にあるのが現状である。

SNSを駆使する海外王室

21世紀のこんにち、王室は「国民の支持があってこそ」成り立つものである。英国王室もこうした各種団体に関わる活動は、一昔前までは「慎ましく」「目立たないかたちで」おこなってきた。しかしそれでは国民に十分理解してもらえない時代なのである。

それを如実に示したのが1997年夏の「ダイアナ事件」であった。当時の英国民の多くが、慈善活動に積極的なのはダイアナだけで、他の王族は冷たいとの誤解を抱いていた。

この誤解を払拭するために、王室はホームページやツイッター、ユーチューブ、インスタグラムといったSNSを活用し、自分たちの活動を喧伝した。国民にとってまさに目からうろこが落ちる思いとなった。いまや英国王室は国民からも絶大な支持を集めるようになった。

2020年1月にチャールズ皇太子の次男ヘンリ(ハリー)王子とメーガン妃が突然王室から離脱すると発表したとき、国民からの怒りが王室ではなく夫妻に向けられたのはこうした王室の地道な「広報努力」があったからにほかならない。

2018年3月23日に北アイルランドを初めて訪問したハリー王子とマークルさん
写真=Northern Ireland Office/CC-BY-2.0
2018年3月23日に北アイルランドを初めて訪問したハリー王子とマークルさん

夫妻から「殿下」の称号とすべての公職を取り上げたエリザベス女王の決定は、国民の実に9割近くから「英断」として高く評価されている。

それはまた今年4月に99歳で大往生を遂げた女王の夫君エディンバラ公爵フィリップ殿下に対する国民の敬愛をも反映していた。老公は2017年5月に96歳目前で公務からの「引退」を表明したとき、なんと785もの団体のパトロンを務めていたのである。ハリーとメーガンはその多くをこれから引き継がなければならない矢先であったのに、国民の目から見れば夫妻の行動は「敵前逃亡」と映っていたのかもしれない。