置き去りにされた「皇室と国民との距離」問題
2021年3月から、政府は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議を立ち上げ、安定的な皇位継承に向けて本格的に検討を開始した。
その第5回(5月31日開催)の会議のヒアリングに招かれ、筆者も私見を述べさせていただいたが、本稿ではその一端を簡単にまとめてみたい。
まず読者のみなさんに問いかけてみたい。現在、日本の皇室には15人ほどの皇族方がおられ、日々の公務に勤しんでおられるが、その全員のお顔とお名前を判別でき、おのおのの年齢やこれまでの足跡、どのようなことに関心を持たれ、どういう役職に就いておられるのか、といったことをすべて答えられるかたがどれぐらいいるだろうか。
天皇ご一家や秋篠宮ご一家についてはある程度はご存じであろうが、それ以外の宮家については国民の大半もほとんど認識していないのではないか。
日本の皇室が現在抱えている最大の問題が、この「皇室と国民との距離」という問題にある。それはまた一朝一夕に浮上した問題などではなく、戦後70年以上にわたって政府や宮内庁、さらには国民自身が「置き去り」にしてしまった、問題の積み重ねによる結果ともいえよう。
「公務」の偏在と圧倒的な少なさ
確かに皇族の方々は「公務」をされている。しかしそれはヨーロッパ、とりわけ英国の王室と比べても格段に「少ない」といっても過言ではない。日本の皇室のなかで特に多忙なのは天皇皇后両陛下と、現況では高円宮久子妃ぐらいのものであり、残りの方々は多忙な公務の日々とは決して言えない毎日を過ごしておられる。
たとえば、総裁や名誉総裁、名誉会長として関わっておられる団体の数である。天皇と皇后を除き、現在各種団体に関わっている皇族は12人で、その団体の総数は88である。これが英国王室ともなると、18人の王族でおよそ3000にも及ぶ団体に「パトロン(総裁・会長)」として関わっているのだ。