パリやバルセロナでも都市型店舗がオープン
「外に出たついでにイケアに寄る」のは、都心に住むイケアラバーにとって願ってもみなかったことだった。これまでは大型店舗に行くには半日割いて予定を立てるしかなかったからだ。
都市型のコンパクトな店舗は、香港と台湾に数十年前から存在し、すでに都市生活に溶け込んでいた。いつかは世界中にできるものと予想はしていたが、近年のそのペースの速さには目を見張るものがある。
東京、パリ、バルセロナ、マドリッド……サンフランシスコにも今秋オープンの予定であり、しかも東京ではこの1年で原宿、渋谷、新宿と立て続けに3店舗が開店というスピード。東京の半分の大きさの香港で5店舗を巡った筆者にとって、都市への集中は不思議なことではないのだが、日本では大きな関心が寄せられている。
「イケアに初めて触れる人」を増やすのが狙い
イケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長に聞いた。
「都市型店舗の存在意義は、物を売るだけでなくイメージアップにあります。メガシティに出店することで、我々は多くの可能性とチャンスを得ることができました。大型店舗、ネット通販、そして都市型の店舗と、たくさんのチャネルを用意して、イケアに初めて触れる人が増えることが狙いです。
出店の立地については、IKEA Family(無料のメンバーシップクラブ)のメンバーがどこにいて、どう移動しているかなど、人々の動きを分析した結果決定されました。今回の3つの場所は山手線沿いにあり、乗り換えの拠点であることも大きな要因です。中でも原宿については、計画を立てずに動く人が多いという特徴もあり、ブランドの認知には最適でした」
香港の渋谷ともいえるコーズウェイ・ベイにあるコンパクトなイケアでは、イケア名物のミートボールをたこ焼きのように小さなカップで売っている。よく高校生が学校帰りに立ち食いをしているところに出会すが、特に店内で何かを買ったようには見えない。しかしおそらく彼らは独立し自分に家具が必要になったとき、イケアで買い物するだろう。