買い物の選択肢の一つとしての「都市型店舗」

東京で生活していると、街によって明確な個性があり、降りる駅でキャラクターが劇的に変わるのがわかる。日本人としての個性というのは自分自身のことなので気付きにくいが、確かに筆者もイースタードは頻繁に買い足している。食品を入れるだけではなく、普段持ち歩くカバンの中のものを小分けして整理したり、旅行に行くときは大きめのイースタードに服やら靴を仕分けしたり。なによりデザインが愛らしいので、ちょっとしたお礼のものなどを入れて誰かに渡すことも少なくない。そんな行動様式が自分以外にも容易に想像できる。

それでは車で来店できない、広々とした空間がないというデメリットがある一方で、都市型ならではの強みは何なのか?

「大き過ぎないものを揃えているので、ブルーバッグ(イケア名物の大きなプラスチックバッグ)に入れて持ち帰れることです。配送料についてもなるべく低価格であるように工夫しています。

東京の他、パリやマドリッドなど都市に住む人々にはショッピングの仕方や、行動に共通点があります。例えば、時間の使い方が変わってきました。かつては買い物は休日に出かけるものでしたが、今では深夜に急にものが欲しくなったり、携帯が手放せなかったり。特に女性の行動に変化が現れていると感じます。実店舗で買い物をする、思い立った時に通販で買えるなど多様な選択肢の中の一つに、都市型店舗があると思われます」

インタビューを行なったのは東京都渋谷区の「IKEA for Business」
撮影=プレジデントオンライン編集部
インタビューを行なったのは東京都渋谷区の「IKEA for Business」

世界最大面積の店舗がフィリピンにオープン予定

都市に集まる人々の消費動向はトレンドにより揺れ動く。その変化に細かくついていけるのもコンパクトな都市型のメリットだろう。何年か先には、品揃えがガラッと変わっていることも考えられる。

都市型を世界で積極的に展開する一方、2021年中には世界最大の面積を誇るイケアがフィリピンのマニラに誕生する(本来2020年のオープンが1年後ろ倒しとなった)。イケアのフィリピンへの出店はこれが初で、旺盛な購買欲を支える存在となる。「どこに行ってもだいたい同じ雰囲気」のイケアが変わりつつあるのかもしれない。

「イケアはこれからも日本ではステップバイステップで、いいロケーションを探していきます。まずはその地域について学び、知見を広げようと思います」

イケア……世界最大のインテリアショップ。中心となるのはイケアストアで、30カ国・地域に378店舗のイケアストアを展開。イケアストアには毎年7億600万人の来客があり、IKEA.comへのアクセス数は36億件を越えている。(INGKA Groupサイトより)
<参考資料>
Go-PopUp「Ikea’s Pop-Up Stores for 20th anniversary in Spain」(2021年5月31日閲覧)
INGKAグループ「Ingka Centres Acquires 6X6 Building in Downtown San Francisco」(2020年9月8日)
INGKAグループ公式サイト
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