うがいする前に口をすすいで歯磨きをすべき

歯学博士で『すべての不調は口から始まる』(集英社新書)という著書がある江上一郎氏は、歯周病原菌がインフルエンザウイルスを口の中で増殖させることについて、同書内でこう説明されています。

「日ごろ、これら(鼻の奥やのど ※著者注記)の粘膜は唾液などの粘液に覆われてウイルスや細菌を防御しています。しかし、歯周病原菌が放出するタンパク質分解酵素の『プロテアーゼ』などがそれらの粘膜を溶かし、インフルエンザウイルスが侵入しやすくなるのです。

すると、細胞壁がこじ開けられてウイルスが入り込み、仲間を増やします。そして別の酵素の『ノイラミニダーゼ』が周囲の細胞へと大量のウイルスを放出すると言われ、感染が気管へと拡大していきます」そのため、「インフルエンザの予防には、毎日の口腔ケアで細菌の数を減らすこと、口腔を清潔に保つことが有効となり、重要」であるとし、うがいの際には、「まずは、口だけをすすぐようにしてください。その後、歯磨きとのどのうがいをしてほしいのです。」と述べられています。

もうひとつ、うがいの目的で見逃しがちなことに「保湿」があります。のどが潤っていてこそ、殺菌や消毒の作用が働きます。のどの潤いのためのポイントは、唾液の作用とのどの奥の状態です。うがいの目的は、「唾液の作用を促すため」「のどの奥まで潤すこと」と考えてください。そこでまず、「してはいけないうがい法」を挙げ、その後に、「適切な方法」を紹介します。

たっぷりの歯磨き粉を歯ブラシに乗せている女性
写真=iStock.com/PeopleImages
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消毒作用があるうがい薬を使いすぎてはいけない

〔うがいの方法NG集〕

× 殺菌・消毒作用があるうがい薬でのうがいのしすぎ

大人の患者さんに多いケースで、ヨード系で殺菌・消毒作用があるうがい薬でうがいを繰り返して、かえってのどを傷める場合があります。殺菌効果が強すぎて常在細菌叢にまで影響し、潤いも奪われて、「のどの防御機能」が低下するわけです。

また、唾液には、口の中を殺菌・抗菌・洗浄する働きがありますが、ヨード系のうがい薬を使いすぎると、唾液のそれらの機能をも低下させます。

さらに、のどや鼻の粘膜の線毛が、鼻水や唾液、くしゃみ、たんなどの粘液とともに病原体を体外へ押し出す役割をしていると伝えましたが、殺菌剤を含む液体でうがいをしすぎると、この粘液が流されて線毛が脱落する可能性があるのです。

ヨード系のうがい薬には「イソジンうがい薬」「ポビドンうがい薬」などがあり、病院で処方される薬でも市販の薬でも、濃い茶色をしています。

主成分に「ポビドンヨード」が含まれるタイプです。のどと口の中の殺菌効果は高いものの、刺激が強い一面があることを知っておきましょう。