靴磨きが自分を変える出発点になる

食品ブランドの立ち上げや拡大に携わっていた頃の私は、仕事の成果が思うように上がらないと、チームメンバーに強く当たって信頼を失ってしまったり、メールを出すときにも安易に前に使った文章のコピペで済ませて、悪い印象を与えたりしていました。

当時も自分ではコミュニケーションに手を抜いていたつもりはなかったのですが、今から見ると非常に「あら」が多く、その「あら」に目が行くようになったのです。

どうしてそうなったのかは、自分でもよくわかりません。靴磨きをやっているうちに、気づいたらそうなっていた感じです。

私の場合「靴を磨く」ことは、単に靴をきれいにするだけでなく、身だしなみ、人とのコミュニケーション、仕事の仕方など「自分を磨く」ことにつながっていったのです。一度靴磨きをしたというだけではなく、それが習慣になったことで、小さな変化が積み重なって大きな進歩が起きていったのでしょう。

企業への出張靴磨きをする濱岡さん
写真=筆者提供
企業への出張靴磨きをする濱岡さん

「靴を磨けば本物の『自信』が得られる」

靴磨きをする一番のメリットは、「靴を磨けば本物の『自信』が得られる」ことだと思います。

私は大学卒業後、コンサルティング会社に就職し、食品メーカーの販売支援を行う会社でさまざまな食品ブランドの立ち上げや拡大に関わってきました。大学受験の失敗体験で自信をなくしていた私は、仕事の実績を上げてなんとか自信を取り戻そうとしてきました。他人から評価されなければ満足できないという状態だったんです。

そんな時に私は、靴磨きの世界チャンピオンである「Brift H(ブリフトアッシュ)」の長谷川裕也さんと出会いました。

長谷川裕也さんと出会った靴磨きセミナー
写真=筆者提供
長谷川裕也さんによる社内靴磨き部でのワークショップ

長谷川さんの靴磨きをそばで見ていて感じたことがあります。それは、自分の「こだわり」を突き詰めて仕事に取り組む人は、「周りに評価されたい」と思ってがんばっている人に比べ、いい仕事をする。結果として多くの方から高く評価されるということです。

他人からの評価を気にせず、自分の「こだわり」を突き詰める。私自身、靴磨きを通じて「こだわり」を持てるようになり、それを突き詰めていくことが大切だと気付かされました。結果的に、「こだわり」の対象はおのずと広がり、服装やコミュニケーションのスタイルも変わりました。仕事もいい方向に進んで好循環が生まれていると思います。そして、「外からの評価により与えられた自信」ではなく、「自らの内面で培われた本当の自信」を持てるようになりました。

磨き終えた靴。鏡面磨きで靴に光沢が生まれている
写真=筆者提供
磨き終えた靴。鏡面磨きで靴に光沢が生まれている