その中で改めて気づいたのが、

「靴磨きをすることで人は変わる」

という事実でした。

セミナーで靴磨きの実演をすると、そこには自分の靴がピカピカに磨かれていくのを見て、本当にうれしそうに顔を輝かせている参加者のみなさんの姿がありました。

企業への出張靴磨き。参加者にアドバイスしながら靴を磨く濱岡さん
写真=筆者提供
企業での靴磨きセミナーで実演する濱岡さん(右)

企業の社長さんからは、「靴磨きが習慣になっている社員が増えた」「目から一番遠い足元のことにも気がつくようになれば、仕事も必ずできるようになる」と声をかけていただきます。これは本当にうれしいことで、コロナ禍でも靴磨きは必要だと実感することができました。

靴磨きから得られる本当のメリット

靴磨きにはさまざまなメリットがあります。たとえば「靴磨きを始めると身だしなみがよくなる」とは、みなさんおっしゃることです。

靴磨きでは細かなところにまで注意を向けます。それを続けていると、注意する対象が靴だけにとどまらず、服や髪型にまで広がっていくのだと思います。

私もかつてはパンツのクリース(センターライン)が全然ついていなかったり、髪の毛もボサボサだったりでしたが、靴磨きが習慣になり、常によりきれいな状態を目指して磨き続けるうちに、これまで無頓着だった身だしなみが気になりはじめ、自分でシャツにアイロンをかけたり、毎日髪をブラッシングするようになりました。

私だけではありません。私が所属している食品ブランド支援会社の社内で「靴磨き部」という活動を始め、職場の人たちの靴を磨いているのですが、そこでも人がどんどん変わっていく様子を目の当たりにしています。

たとえば社長にしても、靴を磨いてもらうようになったら、靴に似合う靴下を買ったり、ノーネクタイ派だったのにネクタイをつけ出したりと、服装がどんどんおしゃれになってきました。頭にはパーマをかけ、ヒゲまで生やす変わりようです。

磨く前の靴(左)と磨いた後の靴(右)
写真=筆者提供
磨く前の靴(左)と磨いた後の靴(右)

私の場合は身だしなみだけでなく、コミュニケーションのスタイルも変わったと感じています。以前は一方的に自分の言い分を伝えていたのが、相手の気持ちを慮って、丁寧に接するようになりました。それは「これまで無意識にしていた自分の言動が、いかに雑だったか」と気づくようになったからです。