「臭いものに蓋をしない」広報の戦略
消費者に不安が広がっているから、おせち選びで失敗しないために、お試しおせちがお勧めだと強調したのです。
これが予想外の大ヒット。事件が起きた次の年ならではの現象として、取材が殺到し、メディアも大いに取り上げてくれたのです。お試しおせちに誘発される形で、通常のおせち料理の売り上げもアップしました。
リスクを背負って攻めた結果、おせちのPRは大成功したのです。結果として、消費者にも安心しておせち料理をインターネットで購入してもらえるようになったのではないでしょうか。
どんなマイナスな要素でもプラスに変えられる、それがストーリーの力です。臭いものに蓋をして、なかったことにするより、むしろ負の事態にも真剣に向き合い、受け止めながらバネにしていくような戦略が広報には必要だと私は思います。
商品の欠点は隠さず長所にする
どんなサービスや商品にも、欠点は必ずあります。
一昔前は、いいところばかりをアピールする誇大広告がメインで、それでもある程度はうまくいっていました。しかし今の消費者は、それを簡単に見抜きます。インターネットでほかの利用者の感想を確認できますし、他社の商品との比較なども簡単にできるからです。
今は欠点を素直に認めて、それに伴うプラス要素を説明するほうが、消費者には企業の誠実さが伝わります。
とはいえ、欠点を欠点のままで出しては、やはりマイナスのままです。そこで欠点を長所にするようなストーリーをつくるというプロセスが不可欠なのです。
飲食店の口コミというと「食べログ」が有名ですが、実はぐるなびにも口コミは存在します。しかし、お店を陥れるような書き込みや否定的な投稿は事前にチェックして載せないようにしています。
それをあたかも欠点であるかのように「食べログさんと違って、ぐるなびさんはいいコメントしか載せませんよね」と言う記者もいます。
そんなとき、私はまず「そうですね」と素直に認めてしまいます。それがデメリットになるということもわかった上での判断です。
素直に認めてから、「なぜぐるなびが、そういうサイトなのか」を説明します。
そもそもぐるなびでは正式名称を「応援口コミ」と言います。つまり、応援していない口コミは載せないことが大前提なのです。
そうしないと悪意や敵意のある書き込みがあったときに、店側の被害を防げません。ユーザーはお店を選ぶ際、どこの誰が言っているかわからない他人の口コミよりも、お店の正確な一次情報(場所、メニュー、値段など)を頼りにしています。ぐるなびにはそれがありますから、お店に対するポジティブな意見や感想だけがあれば十分なのです。